2017年3月15日掲載 − HOME − エネルギー選択宣言一覧 − 1章記事
認証ラベルが再生可能エネルギーを促進する

ニーダーザクセン州消費者協会から「とても推薦できる」認証ラベルだと、ただ一つ最も高い評価を得たのが「グリーン電力ラベル(Grüner Strom Label)」です。ラベルを設立したのは、BUND(ドイツの地球の友)などドイツの主要環境団体3団体と消費者団体、核廃絶を求める医師の団体、平和と将来への責任を主張する自然科学者の団体、再生可能エネルギー促進団体の7団体です。ドイツの電力市場が自由化された1998年に設立されました。同ラベルは現在、電力だけではなく、再生可能エネルギーによって製造されたグリーンガスにもラベルを発行しています。


ラベルは、再生可能エネルギーの発電施設に対して独自の詳細な環境技術基準を設けています。その基準を満たす発電施設で発電された電力でない限り、グリーン電力とは認められません。グリーン電力小売事業者が再生可能エネルギー発電事業者から直接グリーン電力を購入することを求め、公的な電源証明証書はそれに登録された電力と別々に売買されてはなりません。電力供給契約を結んでいる発電施設をホームページなどで公開することも求めます。電力商品が地産地消を目的としているかどうかも、重要なポイントになります。


ラベルがさらに重要視しているのは、再生可能エネルギーの拡大です。電気料金に、再生可能エネルギー発電施設の建設を補助する資金が含まれていなければなりません。年間電力消費が1万kWhまでの場合、電気料金から1kWh当たり最低1セント(1.3円相当)を新設される再生可能エネルギー発電施設に補助します。補助対象はドイツ国内に限定され、小売事業者のホームページなどで情報を公開します。


グリーン電力小売事業者が、原子力発電や石炭火力発電に関わっていることも禁止します。そのため、大手電力傘下の小売事業者の電力商品は、同ラベルを発行する対象とはなりません。グリーン電力に特化した小売事業者の電力商品だけが、ラベルの対象となります。


小売事業者の電力購入量と供給量は、年間ベースで「物理的に」検査されます。グリーン電力ラベルのクラフォナラ事務局長によると、「現段階では、発電と供給の時間的な同時性を求めるのは無理だ。そのために、無用に検査コスト負担を増やすのも意味がない」と説明します。発電と供給の同時性が持続的に維持されるのを求めると、現段階ではまだ多くを水力発電に依存しなければなりません。「それは、風力発電や太陽光発電など小型の再生可能エネルギー発電施設を設置していくことの意義に反する」と、クラフォナラ事務局長は指摘しました。


現在ドイツにおいて、グリーン電力の供給契約を結んでも、グリーン電力が常に供給されるという保証はありません。グリーン電力だけを販売している小売事業者の中でも、この点でとても厳しい基準を設けているのは、グリーンピース・エナジー社です。同社は現在、発電と供給の同時性を一五分単位で維持することを目標にしています。一五分単位で電力購入量と供給量が物理的に一致しなければなりません。


日本では、グリーン電力小売事業者に対して三〇分単位の同時同量性を義務付けています。まだグリーン電力の発電量自体が少ない日本において、この条件を課すのはとても酷だと思います。グリーン電力小売事業者をつぶす規定としか思えません。


グリーン電力ラベルを与えられた電力商品は、二年毎に審査を受けます。これは、年間単位の物理的な供給を2年毎に検査するということです。審査結果によっては、小売事業者に改善を求めることもあります。クラフォナラ事務局長によると、ラベルの中立性と独立性を確保するため、検査は第三者機関に委託し、ラベルを付与するかしないかを同ラベルの組織で独自に判断します。


グリーン電力ラベルの基準は、ドイツで最も厳しいものとなっています。クラフォナラ事務局は、「グリーン電力小売事業者の中には、同ラベルを敬遠する事業者もある」といいます。でもグリーン電力を認証する以上、「グリーン電力を供給される消費者の信頼を得るためには、これくらい厳しい条件を満たすのは当然だ」とも強調しました。その厳しさにも関わらず、グリーン電力ラベルが認証する電力量は年々増えています。


ラベルが設立された当初、再生可能エネルギーで発電された電力はドイツの発電量全体の4%程度にすぎませんでした。ほとんどが固定価格買い取り制度(FIT)の枠内で発電された電力です。市場には、「グリーン電力」とされるFIT外電力がほとんどありませんでした。そのため当時は、原子力発電や石炭火力発電を行なう大手電力会社との関係がない限り、実際には再生可能エネルギーで発電された電力でなくても、再生可能エネルギーの促進を目的とした電力商品にラベルを発行しました。たとえば、自治体電力公社がコジェネレーションシステムで発電した電力です。ただし、電気料金の一部で再生可能エネルギー発電施設の建設を補助することを前提にしていました。


これは自由化当初、グリーン電力不足に苦しむグリーン電力小売事業者を支援することにもなりました。クラフォナラ事務局長は、「日本のようにまだ十分にグリーン電力のない状況では、グリーン電力ラベルのように認証と促進を結び付けた認証システムがとても重要だ」と強調します。


再生可能エネルギーで発電された電力が増えるにつれ、同ラベルは実質的にもグリーン電力を認証するラベルへと変わっていきます。ただ、グリーン電力市場では現在、激しい価格競争で生き残るためにノルウェーなどで水力発電された安価な電力が輸入されているのも事実。それでは、国内で再生可能エネルギーを増やすことには役立ちません。


現在、同ラベルが認証する電力の約60%(2014年時点)はドイツ国内で発電されたグリーン電力です。残りが、オーストリア、スイスなど隣国で水力発電された電力です。この60%という割合は、グリーン電力商品の中でも格段に高いものになっています。


(2017年3月15日掲載)

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