2018年3月31日掲載 − HOME − 放射線防護 − 記事
原発事故後、新生児にクレチン症が増加

日本では、出生後に生まれたばかりの赤ちゃんから血液を採取して、血液検査が行なわれている。それを新生児マススクリーニングといい、ほとんどすべての赤ちゃんが検査を受けている。


これは、生まれつきの新陳代謝異常などを早期発見しておくことで、その後の知能障害や発達障害を予防したり、症状が重くならないようにする目的で行なわれる。


現在、19の疾患が検査対象となっており、そのうちの一つが先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)だ。


クレチン症については、チェルノブイリ事故後に西ドイツ(当時)において赤ちゃんに増加していたともいわれていたが、当時しっかりとは解析、検証されていなかった。


そのため今回、厚生労働省に2000年から2016年までの都道府県別の新生児のクレチン症統計データ(年別)の公開を求め、データを提供してもらった。


それを、ドイツでチェルノブイリ事故後に事故の健康影響などについて統計解析してきた元ミュンヒェン環境研究所研究員のアルフレード・ケアブラインさんに渡して、解析をお願いした。


その結果、3.11後の原発事故で汚染された福島県、宮城県、群馬県、栃木県、茨城県、千葉県と、その他の都道府県で比較すると、この汚染の高い5県では、2012年以降、2000年から2011年までに比べ、クレチン症が35%増加していることがわかった。


増加のピークは2014年に見られ、2000年から2011年までに比べると60%増となる。


これは、東電福島第一原発事故による放射能汚染が赤ちゃんのクレチン症増加に影響を与えたことによると見るべきだと思われる。さらに、クレチン症増加のピークが2014年になったということから、クレチン症が小児甲状腺ガンと異なり、半減期が8日と短い放射性物質ヨウ素131ではなく、他の放射性物質の影響によるものだと推定できると思われる。

(2018年3月31日)

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