前回、当時のバロックオペラの日常について書いた。バロックオペラは当時、数少ない娯楽を提供していたのだった。公演中であっても、飲み食いが当然。どんちゃん騒ぎもあったと思われる。
でもお目当ての歌手のアリアになると、聴衆はそれに酔って喝采した。
映画もテレビもない時代。写真もなかった。フェルメールはすけべな上級貴族の目を愉しませるため、上流娼婦のエロチックな絵を書いたのではないかと、ぼくは書いたことがある。
当時の絵画に裸の女性が多いのはなぜか。その辺も考えたいところだ。
オペラにも、すけべな上流貴族の目を潤す目的もあったに違いない。バロックオペラの題材は、神話がテーマになっていることが多い。でも、そこは生臭い世界として描かれる。それが、上流貴族たちを喜ばせたのだった。
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劇場の桟敷き席 |
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かといって、バロックオペラが誰にでも楽しめたわけではない。
バロックオペラを満喫できたのは、王室をはじめとして、貴族など一部の上流社会の人たちだった。王室は、バロックオペラ作曲家にとって作曲の依頼を受ける最もありがたいクライアントでもあった。王室の家族に誕生日があると、それに合わせて作曲が依頼されることもあった。
舞台は必然的に、絢爛豪華となる。華やかさが求められた。ちょっとしたトリックで、聴衆を笑わせ、聴衆の関心を引きつけることも必要だった。
今でこそ、オペラは高尚なものと思っている人も多いと思う。
決してそうではない。こうしてみると、バロックオペラがとても人間臭いものだとわかると思う。
バロックオペラは、ジャズやロックの乗りで楽しみたい。今バロックオペラが若者に人気があるのは、若者たちがそれを感じているからではないかと思う。
(2020年9月07日) |