クリスマスソングというと、日本では「ジングルベル」か「きよしこの夜」くらいしか思い浮かばない人も多いと思う。ぼくもそうだった。
でもクリスマスソングは、それだけではない。
12月は、クリスマスの準備のための4週間である待降節の期間。その間のある日曜日になると、ドイツ人の友人に招待されたりする。その時みんなは、伝統的なクリスマスソングを一緒に歌うのを楽しみにしてやってくる。
ケーキを食べて力を養うと、さあ歌うぞと、ピアノの伴奏でみんなで一緒にいろいろなクリスマスソングを歌い合う。楽譜は、ホストがコピーを用意してくれている。それを見ながら、みんなで歌うのだ。
クリスマスソングはこんなにあるのか。はじめは、知らないクリスマスソングばかりだった。1年に1回のことだが、何回も招待されるうちに、これもこれもとメロディを覚えていく。
招待客の顔がみんなほころんで、幸せそうになっていくのがわかる。
前回、オラトリオのことについて書いた。となると、バロックオペラとは直接関係ないが、どうしてもクリスマスオラトリオのことについても書いておきたくなる。バッハのクリスマスオラトリオのことだ。
バッハのクリスマスオラトリオが、クリスマスソングと同じように、ドイツのクリスマスになくてはならないものだからだ。
クリスマスシーズンになると、毎年どこかでバッハのクリスマスオラトリオの演奏会がある。有名なプロのオーケストラと合唱団、ソリストと、豪華な顔ぶれのコンサートもある。
でも、中心は教会だ。どこか教会では、必ず教会の合唱団がプロのソリストを呼んで、教会でクリスマスオラトリオの演奏会が行われる。元々教会で演奏することを目的に作曲された作品なので、教会で演奏されて当然だ。
ただ現在、1部から6部までが一度に演奏されることはもうほとんどない。1部から3部か、あるいは1部から4部、または1部から3部に6部と、演奏会でまちまちだ。
ぼく自身も、この時期になると、バッハのクリスマスオラトリオを聞いたくなる。
有名なプロの音楽家たちのコンサートにいっても、必ずしもいい演奏会に出会うわけではない。むしろ、素人さんたちが教会で演奏するクリスマスオラトリオのほうが感動する場合が多い。
これが、バッハの音楽の真髄なのではないのだろうか。
一般市民は小さい時から、年中行事のように毎年教会でバッハのクリスマスオラトリオに接している。合唱団の団員として、あるいは聴衆として。
こうして、バッハの音楽がからだの中に浸透していく。それとともに、バッハの音楽が生活の一部になっていくのだ。
(2019年12月30日)
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