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ベルリン国立オペラで、クロード・ドビッシーのオペラ⟪ペレアスとメリザンド⟫を観た。観たのは1991年3月にプレミアのあった演出の公演で、今回が41回目の公演だった。
ドビッシーが書いた唯一のオペラ作品だが、これがまたすばらしい。オペラに傑作がたくさんある中で、近代オペラの最高傑作の一つに数えていい作品だと思う。
これは、すでに亡くなったルート・ベルクハウスの演出。ベルクハウスの演出については書きたいことがたくさるので、次にまとめて書くことにする。まずは、音楽から書いておきたい。
この演出では、ミヒャエル・ギーレン、ダニエル・バレンボイム、サイモン・ラトルの指揮で聞いている。今回はフランソワグザヴィエ・ロトの指揮。フランス人指揮者でははじめて聴いたが、このオペラはフランス人か余程フランス語に精通した指揮者の指揮でないとだめだと痛感した。
というのはこのオペラでは、ことばがたいへん大切だからだ。そのため、フランス語の抑揚とニュアンスを十分に把握していないと、作品の深さと良さが十分にでてこない。
フランス人ロトは、その辺を十分過ぎるくらいに満喫させてくれた。
オペラは、詩人モーリス・メーテルリンクの同名の戯曲『ペレアスとメリザンド』を原作にし、一部をカット、修正する以外はセリフが原作のまま使われている。
原作のセリフを全面に出すため、音楽は短調が主体で控えめに書かれている。ところところで、沈黙も効果的に盛り込まれている。音楽が語らないのだといっていい。それが、このオペラの美しさの中心に置かれている。
ドビッシーがヴァグナーを意識していたのは明らか。ヴァグナーだと感じるところが多々ある。しかしヴァグナーのように音楽がその場その場の情報をはっきりと提供するのではなく、一つ一つの情報が象徴的に控えめに提供されるといってもいい。
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ベルリン国立オペラでの⟪ペレアスとメリザンド⟫公演後のカーテンコールから。真ん中で黒い洋服を着ているのが指揮のロト |
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話の筋も、ヴァグナーのオペラ⟪トリスタンとイゾルデ⟫なのだ。
アルモンド王国の王太子ゴローに森で見つけられ、結婚したメリザンダ。しかしゴローの愛を感じられず悩んでいる。そこにゴローの異父兄弟ペレアスが現れ、お互いに愛を抱くようになる。しかし二人ともそれを告白できない。ゴローは二人の関係を疑って嫉妬し、二人に不倫の愛を白状させようとする。その時になってようやく、二人は互いに愛を確認する。
しかしペレアスはゴローに刺殺され、メリザンドも生まれたばかりの子どもを残して死んでしまうという物語だ。
物語では、時代も場所の設定もはっきりしない。具体的なものがどこにもない。どこにもありそうな愛の話だが、その象徴性、無言性が複雑に絡み、神秘的、劇的なエネルギーをその裏に感じさせるようになっている。
それが、このオペラの真髄なのだ。
これまでよくわからないが、何となくすばらしいオペラ作品、演出もすばらしいとは感じていた。しかし今まで何回も見てようやくそれを実際に理解し、感じ取れるようになったと思った。
それは、ドイツ語役の字幕をしっかりと読めたこと、さらにロトの音楽づくりがたいへん巧妙だったこともある。
いい歌手が揃っていたのもいい。特に、メリザンド役のマグダレーナ・コジェナーがいい。普段強い音だとといいとは思わないが、このように声を抑えて軽く出すだけでいい役にはたいへん合っている。演技もうまいので、この役にははまっていると思う。
もう35年も前の演出だが、永遠に公演を続けてもらいたい。
(2026年6月24日、まさお) |