2023年2月20日掲載 − HOME − ぶらぼー! − オーケストラ
マナコルダ指揮のコンサートを聞く

ベルリン国立オペラの音楽監督ダニエル・バレンボイムが辞任を発表した直後、ぼくは「ベルリン国立オペラ - バレンボイムの後任独断論」の記事において、その後任にアントネッロ・マナコルダを推した。


「ええ、マナコルダって誰?」、と思う人も多いと思う。


マナコルダは、イタリア・フランス系のイタリア人。指揮者のクラウディオ・アバドとともに、マーラー室内楽管弦楽団を設立したバイオリニストだ。同楽団のコンサートマスターと副会長を務めていた。


本格的に指揮者になることを決めたのは、21世紀に入ってから。その時はすでに、30代になっていた。その点で、知名度がまだまだなのは仕方がない。


現在、ベルリンに隣接するポツダムの室内管弦楽団カンマーアカデミーの首席指揮者・芸術監督を務める。すでに、ベルリンやヴィーン、ミュンヒェン、ニューヨーク、ロンドンなどで世界トップクラスのオペラハウスで指揮をしている。ベルリン・フィルでも、昨年2022年5月にデビューしたばかりだ。


今回ベルリンの新しい室内楽ホールであるピエール・ブーレーズ・ホールにおいて、マナコルダ指揮によるポツダム・カンマーアカデミーのコンサートがあった。早速、聞いてみることにした。


演奏されたのは、細川俊夫の開花II(オーケストラのための)、ブリテンの声楽と管弦楽曲イリュミナシオン、ベートーヴェン交響曲第6番『田園』だった。ぼくは、ドイツのオーソドックスな作品を聞きたかったので、ピッタリのプログラムだった。


そこでここでは、『田園』を中心に書いておこうと思う。


『田園』は多分、20年以上も聞いていなかったと思う。その前に聞いたのは、アーノンクール指揮によるベルリン・フィルの演奏ではないか。


マナコルダの音楽は、どの作品においてもとても緻密に、細かいところまで音楽造りがされている。作品毎にこの作品では、自分はこういう音楽をしたいのだというところがはっきりしていて、まったくぶれない。


その点で、カルロス・クライバーやキリル・ペトレンコに似ている。しかしマナコルダの音楽は、マナコルダの音楽。ペトレンコとは、まったく異なる。むしろ、クライバーのほうに近いと感じる。


実際、指揮もクライバーの指揮を思い出すところがあった。しかし、クライバーの音楽のようなエレガントさよりは、マナコルダの音楽ではダイナミックさが際立つ。


バイオリニストだからか、両手がまったく別々に動いているように見える。左手の長い指がとても細かく動いて、オーケストラに指示される。


パート毎にそれぞれの音楽がはっきり表現され、田舎の自然においてその掛け合いが見事に展開される。フルートやオーボエ、クラリネットによる小鳥の鳴き声は、音一つ一つがとても細かく演奏された。こんなに生き生きとした小鳥の声は、聞いたことがない。


第4楽章の雷雨と嵐も、強弱がはっきりし、背筋が寒くなる思いがした。


最後はオブリガートを受け渡ししながら、静かに終わる。もうこれで終わり?と感じた。それだけ、音楽が集中的にぎっしり詰まっていたのだと思う。もっともっと聞いていたかった。


いや、すばらしいどころか、すごい指揮者が出てきたものだ。今後が楽しみ!


(2023年2月20日、まさお)
記事一覧へ
関連記事:
ベルリン国立オペラ - バレンボイムの後任独断論
ティーレマンがブロムシュテットの代役
コンサートマスターに聞く|ローター・シュトラウス(シュターツカペレ・ベルリン)
関連サイト:
ポツダム・カンマーアカデミーのサイト(ドイツ語)
この記事をシェア、ブックマークする
このページのトップへ