2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロとするカーボンニューロラル(気候ニュートラル)を実現するには、再生可能エネルギーを大幅に拡大させなければならないと、前回書きました。
ただそれに対して、排出される二酸化炭素を分離して回収し、それを地下などに貯留しておく二酸化炭素回収貯留技術(CCS)があります。石炭火力発電と組みわせて使えば、発電によって排出される二酸化炭素の排出を抑制することができます。
回収された二酸化炭素は、地下の深い石炭層に注入するほか、海底に貯留することなども考えられています。しかし回収される二酸化炭素の量が莫大な量になるだけに、それで二酸化炭素を安全に貯留しておくことができるのかどうか、はっきりしません。
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もう使われていないドイツの二酸化炭素回収貯留実証プラント(CCS)。この実証プラントでは、地上に設置されたタンクに二酸化炭素を仮保管していた。だがすぐにタンクが一杯になったことから、実証プラントの運転は停止された。 |
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CCS技術では、二酸化炭素を処分するのではなく、どこかに貯めておくだけです。それでは、二酸化炭素排出の問題を解決したことにはなりません。二酸化炭素の処分問題を後回しにするだけで、二酸化炭素の排出自体を解決するものではないことをはっきり知っておく必要があります。
カーボンニュートラルを実現するにはまず、二酸化炭素を排出しないことを考えなければなりません。そのためには、発電において再生可能エネルギーで発電するしかありません。原子力発電なら二酸化炭素を排出しないではないかという意見もあると思います。でも原発が、その解決策にはならないことは本サイトでいろいろ指摘していますので、それについてはここでは触れないことにします。
カーボンニュートラルを追求するには、重工業において水素の需要が増大します。水素は電気分解で製造しますが、そのためにはたくさんの電気が必要になります。その電気が再エネで発電されるべきであることはすでに述べた通りです。
でも、どうしても二酸化炭素を排出してしまう産業があります。たとえばセメント産業などです。今のところ、その分野で二酸化炭素の排出を避ける方法がありません。
そういう分野では、排出された二酸化炭素を再利用(CCU技術)することが考えられます。しかしその場合も、どこかでいずれ二酸化炭素を再び排出しなければなりません。最終的には、CCS技術が必要になる可能性が大きいと思います。
とはいえ、できるだけCCS技術を使わないで済む方法を開発しなければなりません。それでも最後にどうしてもその他に可能性がない場合に限り、CCS技術を導入します。
それが、カーボンニュートラル(気候ニュートラル)を実現する最も適切な方法だと思います。
(2020年11月04日)
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