Q:ドイツ政府は脱原発を決定したが、ドイツがそうした決定的なポイントは?
フクシマ事故が決定的なポイントだった。
その後、倫理委員会で事故のこと、脱原発による影響が評価された。野党も含め、政治全体で評価されたのはいうまでもない。その結果みんなが、原子力のリスクは大きすぎると判断した。
日本で原発事故が起こったというのが大きかった。日本が民主国家であり、ハイテク国家であり、ドイツと似ているからだ。
チェルノブイリ事故の起こったウクライナの場合は、技術力がなく、行政管理も行き届かず、民主国家でなかった。そのため、ドイツの比較対象とはならない。その結果、ドイツではそういう事故は起こらないだろうと考えられた。
それに対して、日本で起こったことはドイツでも起こる可能性がある。
Q:その時、ドイツ市民はどういう役割を演じたのか
ドイツ市民は政府に大きな圧力をかけた。2010年秋に政府が脱原発を見直した時に、10数万人の市民が抗議デモに参加した。フクシマ事故が起こった時も20万人、30万人の市民が抗議デモに出た。
政府はそれによって、市民からたいへん大きな圧力を受けることになった。
Q:ドイツ経済界は脱原発をどう思っているのか
ドイツ経済界は、電気料金が高くなることを心配している。ただ世界各国で電気料金が高くなっており、電気料金の高騰はすべての国で心配されている。
各国政府はそのため、経済界、特にエネルギー消費の多い産業を特別扱いして安価な電気を提供している。ドイツもその例外ではない。
将来的には石炭、石油、ガスが高くなり、原子力も事故が起こると極端に高いものとなる。
一番安く手に入るのは、再生可能エネルギーだ。すぐに安くなるということではないが、まずそれに投資していかなければならない。
そうすれば、次の世代、われわれの子どもたちの時代には、電気料金は安くなっている。それは、産業界にとってもだ。
Q:ドイツ経済界は脱原発を受け入れたのか
そうだ。もちろん経済界はできるだけ安い電気料金を求め、特別扱いを要求している。しかし基本的に、ドイツ経済界は脱原発を受け入れた。
たとえばドイツ大手総合メーカのジーメンス社は、原子炉製造事業から撤退した。(電力会社の)RWEも、英国での原子力発電事業から撤退した。その他の企業も追随している。
ドイツでは原子力技術にもう将来性がないとされ、原子力技術を輸出するつもりもない。その結果、企業の関心は再生可能エネルギーとそれに関連する技術に移行している。
Q:政治決定が(経済界にとって)重要だったということか
そうだ。政治決定だ。
まず市民が(原子力は)いらないと意志表示をしたので、政府は決定せざるを得なくなった。政府は(脱原発)政治決定とともに、再生可能エネルギーへの転換を図らなければならなくなった。
ただすべての人がそれでいいと思っているわけではないので、まだ啓蒙活動が必要だ。
でも経済界は、原子力に将来性がないので、将来市場で生き残っていくには再生可能エネルギーが中心になると見て、すでにその準備に入っている。
政治が脱原発を決定した以上、ドイツの市場ではもう原子力は必要とされないからだ。
(議員会館議員事務所でインタビュー) |