2019年9月21日掲載 − 再生可能エネルギー
独政府、気候保護法の基本内容を閣議決定

国連で各国首脳の参加する「国連気候行動サミット」が開催されるのを前に、ドイツ各地では2019年9月20日、国際的に連帯して若者たちが気候危機を訴えるストライキデモが行われた。ベルリンでは連邦首相府の周辺でデモが行われ、全体で10万人以上がデモに参加したとされる。


そのデモの真っ最中に、政府と与党の代表は気候保護法制定に向け、前の晩から夜通しで交渉を続けていた。政府と与党は2019年9月20日午後、法律の基本的内容について合意し、その直後にその内容が決定された。


ドイツ政府は、2020年までに二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を1990年比で40%削減するとしていた。しかし、その目標を達成できないことはすでにはっきりしている。


そのためドイツ政府は、2030までに55%削減するとした目標を必ず達成したい。達成できないと、国際的に約束した目標を再び守れないことになる。その結果、EUに対して多額の罰金を支払わなければならない上、ドイツ政府の面子も丸つぶれとなる。


今回決定されたのは主に、2030年までに温室効果ガスを55%削減するための施策だ。しかしその基本的内容が発表される前から、政府の決定がストライキする若者や環境団体を満足させることのできるものにはならないことがはっきりしていた。


ドイツ政府は、1990年代後半から産業分野において自主規制の形で温室効果ガスの排出削減に取り組んできた。しかし、民生部門と交通部門の排出削減では後手に回り、ほとんど適切な施策を講じることができないままになっていた。


民生部門は、市民生活に直接関係する。それだけに、市民に痛みの伴う施策は避けたい。交通部門では、ドイツの基幹産業である自動車産業に大きな影響が出る心配がある。


そのため、この二つの部門と脱石炭は、気候変動対策においてアンタッチャブルに近い状態だったといっていい。脱石炭は、ドイツが世界最大の褐炭産出国であるだけに、石炭産業に与える影響はあまりに大きい。


しかし、2020年までの削減目標が達成できないことがはっきりする。それだけに、名前だけの政策ではなく、実質のある政策を講じない限り、2030年までの削減目標も達成できなくなる。


そうした背景の下、ドイツ政府は2019年1月、脱石炭を2038年までに実現することを決定した。


さらに、Fridays4Futureの活動が活発になり、若者からの変革圧力が強くなってきた。ディーゼル車の排出ガス値の操作問題で、政府は自動車産業を最後の最後まで守ってきた。それに対して、自動車産業内では電気自動車や燃料電池車に向けた技術革新どころか、既得権益をできるだけ長く守ることしか考えられていない。その結果、ドイツの自動車産業が世界の潮流から遅れ出している。


環境政党の緑の党が、選挙がある毎に勢力を伸ばし、今や最大野党どころか、与党を脅かす存在になっている。


こうしたいろいろな圧力の中、ドイツ政府もここにきて重い腰を上げ、民生部門と交通部門にメスを入れざるを得なくなったといえる。


ドイツ政府が発表した内容は、民生部門と交通部門の広い分野に渡って細かく、施策が講じられている。しかし抜本的な改革というにはほど遠く、既存構造の中で政策を部分的に修正しているにすぎない。


今回ドイツ政府が決めた主な内容は、以下の通り。


+炭素税の導入を見送る。その代わり、交通部門にも2021年から排出権取引を導入し、二酸化炭素の排出を認める証書を取引することで、二酸化炭素の排出を高くする。それに伴い、ガソリンなどの燃料が割高となる。初年の2021年は二酸化炭素1トン当たり10ユーロ(1300円)と低く、それ以降1トン当たりの額を引き上げ、最高60ユーロまで引き上げる。

+自動車税額をこれまで以上に二酸化炭素の排出量が多ければ多いほど引き上げる

+長距離鉄道輸送に対する付加価値税の税率を19%から7%の軽減税率に引き下げて、運賃を安くする

+航空税を課税して、飛行機の利用を割高にする

+2026年から住宅に石油ボイラーを設置するのを禁止する

+有機農業を促進して、産業化された農業からの改革を図る

+再生可能エネルギーの発電に占める割合は、これまで通り2030年まで65%とする。再生可能エネルギー普及に伴う負担を軽減して、電気料金を軽減する

+脱石炭はこれまで通り、2038年までとする

ドイツ政府はそれに伴い、2023年までに気候保護施策に総額540億ユーロ(約7兆円)を投資する。この負担は、各施策による負担増によって得られる税収などで回収される。


Firdays4Futureや環境団体は、脱石炭を2030年までに前倒しすることや、ガソリン車とディーゼル車の販売を2030年以降禁止すること、排出される二酸化炭素に炭素税を課すことなど、これまでの政策を抜本的に改革する施策を求めていた。だが、政府はそこまで踏み込むことはできなかった。


閣議決定後の記者会見では、抜本的な改革で最初から市民に痛みの伴う政策を講じるのではなく、最初はそれほど痛みの伴わない政策で、市民が次第に自主的に生活スタイルを変えていくことを考えたと説明があった。


しかしこの政策内容では、ガソリンは当初1リットル当たり3セント(約4円)しか割高にならない。これで、消費者がガソリン車から電気自動車に買い換えたり、公共交通を優先するようになるとは考えられない。


この基本政策は2019年末までにそれぞれ具体的に立法化されるが、政策内容の発表後すぐに、「勇気のない政策」とか、「(ここにきて何もしないのは)スキャンダル」などと厳しい批判が出た。


(2019年9月21日)
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