ドイツの風力発電産業が今、危ない。
2019年1月から3月までの第1四半期に設置された風力発電施設は86基で、出力容量はわずか231MW。前年同期に比べると、82%減となる。
これは、再生可能エネルギー法が2000年に施行して以来、最低の数値だ。
ドイツ経済研究所の推定では、2016年段階で風力発電産業において16万人以上が働いていた。しかし金属労組によると、そのうちの最低でも25%の雇用がこれまでに喪失したという。
ただドイツにおいてこれまで通り風力発電が成長しない限り、ドイツが国際的に約束した気候変動対策の目標を達成することはできない。
ドイツは2030年までに、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を1990年比で55%削減するとしている。ここでは、再生可能エネルギーによる発電量を2030年までに65%とすることが前提となっている。
この目標が達成されないと、ドイツに600億ユーロ(7兆.8000億円)の罰金が課せられる見込みだ。
ドイツでは現在、発電量に占める再生可能エネルギーの割合は40%超。しかし、再生可能エネルギーの中でも最も割合の多い風力発電(発電量全体の25%超)がしぼんでしまうと、2030年までに再生可能エネルギーの割合を65%とする目標は達成できない。
その結果、気候保護目標も危なくなる可能性が高い。
太陽光発電産業では、中国の台頭で国内企業が消滅していったドイツ。このままでは、風力発電産業でも太陽光発電産業の二の舞を演じかねない状況だ。
経済省のイニシアチブで2019年9月はじめ、関連業界企業や関連産業団体、環境団体などが集まってその対策について議論した。だが、結論は出ないままに終わっている。
風力発電の伸び悩みには、いろいろ背景がある。
一つに、野鳥保護のために風力発電に対する反対が強くなっていることを挙げることができる。その結果、風力発電施設建設の許認可に対する訴訟も急増している。
それと同時に、関連官庁では許認可を出すのに審査が慎重になった。許認可手続きの期間がこれまでの3倍にまで伸び、許認可が出るまでに3年近く待たなければならない状態となっている。
これは、風力発電の増加とともに、自然環境への影響をできるだけ少なくして設置できる場所が減少しているからでもある。
もう一つの大きな要因は、再生可能エネルギー法の改正だ。同法の改正によって、固定価格買取り制度の下で設置される風力発電施設の電力買取り固定価格を決めるのに入札制が導入された。さらに、年間に新たに設置される総発電容量にも上限が設置された。
それによって、風力発電の成長にブレーキがかけられた。また入札制度の導入で電力の買取り固定価格が大幅に下がり、風力発電に投資する魅力が失われた。
たとえばドイツ南西部ラインラント・プファルツ州のヘフケン環境大臣(緑の党)は、同州自治体の再エネに対する取り組みの記者会見で、この上限は早急に撤廃する必要があると要求していた。
(2019年9月17日)
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