風力発電に対する反対にどう対応するのか

 ドイツにおいて列車に乗っていたり、車で高速道路アウトバーンを走っていると、ドイツ北部から中部にかけてたくさんの風力発電施設(風車)が立ち並んでいることがわかります。

ドイツ南西部ラインラント・プファルツ州ライン・フンスリュック郡の風車

 とてもたくさんの風車がが並んでいるので、「スゲー」とびっくりさせられることもあります。

 それに比べると、ドイツ南部のバイエルン州とバーデン・ヴュルテムベルク州では、ほとんど風車を目にしません。

 風車に関して南北格差ができている背景には、いくつか理由があります。

 ドイツの南部州では、風車を設置するには風が少なくて風力発電するには効率がよくありません。また、風車によって景観が破壊されることを恐れて、行政側が規制を厳しくするほか、風車を設置することに対する住民の反対もあります。

 風車がもたらす問題は、景観公害ばかりではありません。

+風車が低周波の騒音を引き起こす
+野鳥が死ぬ
+風車によって影ができる
+夜間、風車の赤光ランプが交通障害となる
+風車を設置するために森林などが伐採され、自然が破壊される

など、風車を設置することによっていろいろ問題が発生します。

 低周波と野鳥の問題については、すでに最新型の風車では技術的にその対策が講じられています。騒音問題では、ギアのない風車もあります。ロータ(プロペラ)が回って風切り音が出る問題についても、ロータの角度を遠隔操作できるものも出ています。

 ドイツでは、風車による影や騒音問題を回避するため、風力発電パークをできるだけ高速道路や鉄道の周辺に設置しています。風車を設置する場合、住宅地から最低1㎞離して設置しなければなりません(ただし、州によって異なる場合もあり)。

 風車を設置するために森林が伐採された場合、それと同じ面積分を他の場所で植林しなければなりません。

 こうした規制や対策があっても、風車に対する住民の反対はなくなりません。

 ただそれによって、ドイツ南部で風力発電に出遅れ、ドイツの発電拠点が南北でアンバランスになりました。ドイツの原子力発電の拠点がドイツ南部にあるほか、産業の中心もドイツ南部に位置しています。

 ドイツは、2022年までに脱原発を終了させます。ドイツ南部で原子力発電されていた電力を補うため、ドイツ北部から南部に多量の電気を送電しなければなりません。そのために、高圧線を何本も新たに設置しなければならなくなっています。

 高圧線を設置するにも、ドイツ北部から南部にかけて大きな鉄塔が立ち並びます。今度は、その高圧線を設置する場所で住民の反対運動が起こります。

 ただ、反対運動する住民が再エネの拡大に反対しているわけではありません。再エネは賛成、でも自分の住まいにそれによって影響があっては困るということです。

 高圧線については、高架線ではなく、地下ケーブルを敷設することによって住民の反対に対応している地域もあります。でも、地下ケーブル化によって高圧線設置のコストが何倍にも膨れ上がります。また地下ケーブルによって、新たな環境破壊も起こります。

 住民の反対問題に対して、ドイツでは風車や高圧線の設置に住民参加を促すことで解決しようとしています。ここでいう住民参加とは、住民が風車や高圧線の設置に投資できる道を開いて、住民がそれによって利益を共有できるようにします。要は、お金で住民の反対を少なくしようというものです。

 それでも、風車や高圧線に対する住民の反対はなくならないと思います。

 風車に対する反対は、巨大な駅や高層ビルが建ったり、新しい技術が出てくると、反対が起こるのと同じだと見ている人もいます。それが当たり前になると、反対は少なくなるというものです。

 ただいずれにせよ、住民の反対に対しては真摯に、慎重に対応していくしかありません。

 再生可能エネルギーへ転換することが、社会全体のプロジェクトであることを住民一人一人が意識できるように、いろいろな形で住民参加を進めていくことも大切だと思います。

2019年9月01日、まさお

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