最終処分の問題に入る前に、放射性廃棄物とは何かをはっきりさせておく必要があると思う。
放射性廃棄物は、放射線を放出するので処分されなければならないものと一般的に思われていると思う。放射線を発するのは、廃棄物の表面に放射性物質が付着しているか、放射性物質が内部に含まれているからだ。
ただ、放射性廃棄物かどうかを区分するために、クリアランス基準があることを前回述べた。これは、放射線を発するからといって、すべてが放射性廃棄物となるわけではないということだ。この点に注意しなければならない。
クリアランス基準を超えないと、法的には(!!)放射性廃棄物とはされない。
ここで、クリアランス基準を超えているかどうかを判断するのは、原発などの敷地内にある放射線管理区域において発生した廃棄物だ。
だから、放射線管理区域以外で発生した廃棄物は、基本的に原子力法制の規制枠外となり、放射性廃棄物とはならない(脚注参照)。
本来だと、次に放射線管理区域を定義しなければならない。ただそれをすると、それだけでも難しいのにもっとわかりにくくなるので、ここでは単に以下のようにさせてもらう。
放射線管理区域は、放射線が一定以上ある区域をそうでない区域からはっきりと区分して、不要に放射線で被曝しないように立ち入りを規制している区域のこと。必要がない限り、放射線管理区域には入ることができない。そこに立ち入る場合、人の被曝線量が管理される。
放射線管理区域は、原発など原子力施設内だけにあるわけではない。放射性物質や放射線は、医療や産業用の機器のためにも使われる。だから、医療分野や産業界においても、一定の基準を超える区域は放射線管理区域となる。
たとえば、病院のレントゲン室は放射線管理区域だ。
これまでのことを簡単にまとめると、放射性廃棄物は放射線管理区域で排出される廃棄物で、クリアランス基準を超えるものといえると思う。
一般的に、放射性廃棄物には低レベル、中レベル、高レベルの放射性廃棄物があるといわれる。
ただ低中高を区分するのに、「ワールド放射性廃棄物レポート公開」の記事でも書いたが、国際的に統一された基準があるわけではない。各国がそれぞれ放射性廃棄物を分類している。
たとえばドイツの場合、放射性廃棄物を「熱を発する」かどうかでしか区分していない。これは、熱を発するものと発しないもので処分方法が異なるからだ。
基本的に、低中レベルの放射性廃棄物は熱を発しない。高レベル放射性廃棄物はかなり高温なので、長い間中間貯蔵して冷やした後に処分する。
ただこう説明しただけでは抽象的すぎて、放射性廃棄物とはどういうものなのか、よくわからないと思う。
そこで次回は、放射性廃棄物が具体的にどういうところで発生すのか、その排出先から放射性廃棄物について見ることにする。
(2020年1月14日) |