前回、最終処分中に地下層に埋められた放射性廃棄物を掘り起こして、地上に回収する可能性を残しておくことについて述べた。その目的は一つに、将来放射性廃棄物を無害化する技術が開発されるかもしれないからだ。無害化するには、埋めた放射性廃棄物を掘り起こして回収できなければならない。
放射性廃棄物を無害化する研究開発は、すでに行われている。たとえば、特殊なレーザーを使って放射能を無害化する。
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廃炉中のグライフスヴァルト原発では、低中レベル放射性廃棄物がコンテナにいれて中間貯蔵されていた |
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放射性物質を無害化する方法は、いずれ開発されると思う。あるいは、半減期を大幅に短縮できるだけでもかなりの利点がある。ただそうした方法が、実験室だけで可能であっては意味がない。
放射性廃棄物には、大きく分けて低中高レベルの放射性廃棄物がある。それをすべてまとめると莫大な量になる。
それをすべて掘り起こして回収するのは、たいへんな作業だ。回収できても、実験室レベルで少量の放射性物質しか無害化できないようでは、その方法は莫大な量の放射性廃棄物には使えない。
さらに放射性廃棄物では、放射性物質が粉末になってまとめられているわけではない。どこに、放射性物質が付着しているのかもはっきりしない。使用済み核燃料は、細いチューブに入ったままだ。再処理後に残った高レベル放射性廃棄物は、ガラスで固化されている。
放射性廃棄物を無害化するとは、実験室レベルで可能になるのではなく、こうしたすべてのケースに対応できなければならない。大きな工場で、どんな形をした部材に対しても可能になる大規模技術として開発する。さらにその技術を可能とする機械が、大量に製造されなければならない。
放射性廃棄物を無害化するとは、そこまで技術開発されなければならないということだ。問題は、そこまで開発できるかどうかだ。ぼくは、実験レベルでは無害化が可能になっても、大規模技術として開発するのがとても難しいのではないかと思っている。
もちろん、数百年先のことは今予測することはできない。そうした技術が将来開発されることを願いたい。
(2020年7月14日) |