2021年12月28日掲載 − HOME − 脱原発一覧 − 記事
ドイツ、原子炉3基を廃止

ドイツでは、2011年に法的に規定された脱原発計画に基づき、今年2021年12月31日に3基の原子炉が最終的に停止され、廃炉となる。


最終停止されるのは、ドイツ北部にあるブロックドルフ原発の原子炉(シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州)と、西部グローンデ原発の原子炉(ニーダーザクセン州)、さらに南部グントレムミンゲン原発のC号機(バイエルン州)。


それに伴い、ドイツでまだ稼働している残りの原子炉は、ドイツ北西部にあるエムスラント原発の原子炉(ニーダーザクセン州)、南西部ネッカーヴェストハイム原発の2号機(バーデン・ヴュルテムベルク州)、南部イザー原発の2号機(バイエルン州)の3基となる。


残りの3基は、1年後の来年2022年12月末までに最終停止され、廃炉となる。それとともに、ドイツでは稼働する原子炉がなくなり、脱原発が完結する。


独ブロックドルフ原発
ドイツのブロックドルフ原発の原子炉。この原子炉は2021年12月31日に停止され、廃炉となる。ドイツ北部のエルベ川沿いで撮影

まだ稼働している原子炉を保有する電力会社は、原子炉の最終停止に向けて時間をかけて準備してきた。そのため、これらの原子炉を再稼働ないし、稼働期間を延長するのはすでに不可能な状況だ。


さらにドイツでは、発電電力量に変動のある再生可能エネルギーによる発電電力量が発電電力量全体の半分近くに増えたことで、発電電力量が常に一定で柔軟性のない原子力発電とは両立しない状況にもなっている。


ただこのままでは、電力の安定供給は維持できない。そのためドイツは、いつでも柔軟に発電電力量を調整できるガス発電所をリザーブとしてキープすることで(戦略的予備力)、電力需要に応じて柔軟に対応できる体制を整え、電力の安定供給を保障している。


しかし気候変動問題が深刻なことから、ドイツにおいても発電において二酸化炭素を排出しない原子力発電に対する見方に変化が現れてきている。


ドイツでもリベラルで、最もインテリジェントな新聞として通る週刊紙のディ・ツァイト(Die Zeit)紙でさえ、2021年12月25日付けの論評記事「気候非常事態から稼働期間延長を(Au dem Klimanotstand muss die laufzeitverlängerung folgen)」において、原子力発電を二酸化炭素の排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルに橋渡しする技術として考え、残った原子炉の稼働期間を延長するほか、小型炉など新しい原子力技術の研究開発を行うべきだと主張する。


欧州委員会は来年2022年1月中旬に、原子力発電をグリーンで持続可能なエネルギーとしてEUのいわゆる「グリーンリスト」に入れるかどうかを決めなければならない。


欧州委は今のところ、フランスのマクロン大統領が小型炉の研究開発と建設を進めることを発表するほか、東欧のポーランドやチェコなどが原発を新設したい意向であることから、原発をグリーンリストに入れたい意向だ。


ただ最終的には、それがEUの首脳会議で決議され、それが欧州議会によって同意されないといけない。首脳会議では全会一致ではなく、各加盟国の人口に応じて割り振られた票数による多数決で決議される。そのため、原発をグリーンリストにいれるとする欧州委の提案が通る見通しだ。


しかしドイツの中道左派新政権には、反原発の立場の緑の党が加入している。緑の党には今のところ、ドイツ政府として原発をグリーンリストに入れることは認められない。


ただディ・ツァイト紙の論評は、緑の党は「ヨーロッパ政党」として、EUの力を強化することを望んでいるはずだとする。それにも関わらず、EUにおけるこれまでの独仏連合や、隣国のポーランドやチェコの意向をつぶしてまで、原発をグリーンリストに入れることに強行に反対するのが正当なのかどうかと、疑問を投げかける。


もし緑の党が脱原発を押し通すことができても、それは「健全な判断ではなく、イデオロギーの勝利」だと主張する。


現実問題として、原発に依存するフランスのほか、石炭火力発電への依存度の高い東欧諸国が原発なしに、EUが目標とするように、2050年までにカーボンニュートラルを実現するのは難しいと見られる。2050年までにカーボンニュートラルを達成するには、各加盟国の事情に応じて柔軟に対応しなければならない。


そのためには、原発を稼働できる期間を延長するとしても、各国毎に最終的に脱原発する期限を明確にさせるなど、何らかの妥協案が求められる。脱原発国と反脱原発国の面子を保つ方法が探られると思う。


個人的にぼくは、原発をグリーンリストに入れることには反対する。今原発に進めば、国の将来、自国の後の世代の将来をダメにしてしまうのは明らかだ。しかし他国の将来には、ぼくにもドイツにも口出しはできない。自国の将来は、自国で判断して自国で決めるべきだ。各国の政府は、各国の市民によって民主的に選ばれた政府。その政府が自国の市民のために決断するのは、その国の市民の意思でもある。それは尊重されるべきだ。


フランスがこれからさらに原発を拡大させても、再エネを拡大させるドイツは将来、先進国でありながら再エネへのエネルギー転換を実現する先駆者として技術的にも、経済的にもより優位になるだけだと思う。EUにおいて将来、ドイツがより強大になるのは明らかだ。フランスやポーランドなどは本来、それを避けたいはずだ。でもその現実が見えないのだから、自業自得としかいいようがない。


(2021年12月28日)
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関連サイト:
ディ・ツァイト(Die Zeit)紙2021年12月25日付けの論評記事「気候非常事態から稼働期間延長を」(ドイツ語)
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