2021年10月02日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
全国鉄道無料キャンペーンに70万人

先月(2021年)9月に2週間、ドイツで中近距離鉄道と都市公共交通機関の定期券を保有している人を対象に、中近距離鉄道と都市公共交通を全国において無料で利用できるキャンペーンが行われていることを報告した。


中近距離鉄道と都市公共交通の定期券を持っておれば、中近距離鉄道を乗り継いでドイツ全国を移動できる。ただドイツ北部のフレンスブルクから南西部のフライブルクに中近距離鉄道だけを乗り継いで移動するには、8回乗り換えて全体で約16時間かかる。


それに対してドイツの高速長距離鉄道ICEを利用すると、8時間弱の半分で目的地に到着する。乗り換えも1回で済む。でもこうして、のんびり移動するのもいい。高速鉄道では体験できない新しい発見もあるはずだ。


キャンペーンを主催した公共交通機関600社の協同団体「ドイツ交通機関団体(VDV)」が発表したところによると、キャンペーンには70万人以上の人が参加したという。この数だけ見ると、キャンペーンは大成功だったと思う。


VDVによると現在、公共交通定期券所有者はコロナ禍前に比べて13%減っている。公共交通の利用者もコロナ禍前の70から75%にしかならないという。しかし利用者は、今年2021年はじめがコロナ禍前の60%であったので、回復傾向にある。


脱炭素化のためには、電気で走る鉄道は交通改革の重要な柱となる。そのため、公共交通機関の利用者を大幅に増やさない限り、交通において脱炭素化を実現するのは難しい。特に利用者の少ない地方において、公共交通網をどう整備するのか。それが難題だ。


本サイトでも、オーストリアのヴィーンで市内区間乗り放題の年間定期が365ユーロ(約4万7000円)だというのは何回も書いた。オーストリアでは今月2021年10月からそれを全国に拡大し、長距離列車も含め全国公共交通乗り放題の年間定期がまず949ユーロ(約12万円)で販売される。ただこれは最初の割引料金で、正規料金は1095ユーロ(約14万円)である。


スイスでは、公営私営を問わずすべての公共交通機関を利用できる全国年間定期(GA(独語)/AG(英仏伊語))が2015年8月から導入されている。現在、全国年間定期(2等車)の価格は3860スイスフラン(約46万円)。その利用者は約40万人(2021年9月)を数える。コロナ禍前の2019年には約50万人のGA/AG利用者がいたというから、ここでもコロナ禍の影響がでている。


ドイツではドイツ鉄道が、長距離列車とドイツ鉄道傘下の中近距離鉄道と都市公共交通機関を自由に利用できる年間定期BahnCard100を販売している。年間価格は2等車の場合、4027ユーロ(約52万円)。ただスイスと違い、私営交通機関は含まれない。


それに対してドイツの環境団体「ドイツ環境支援」は、中近距離鉄道と都市公共機関を全国で利用できる年間定期「ブルーチケット」を365ユーロで販売する案を提案している。


(2021年10月02日)
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関連リンク:
ドイツ交通機関団体(VDV)のサイト(ドイツ語)
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