2021年5月15日掲載 − 再生可能エネルギー
ドイツ政府、気候保護法改正へ

ドイツ政府は2021年5月12日、憲法裁判所が2019年12月に制定された気候保護法を違憲だと判断したのを受け、気候保護法の改正案を閣議決定した。


それによると、これまで気候保護法が二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を1990年比で2030年までに55%削減するとしていた目標を、65%に引き上げる。さらにカーボンニュートラルを実現する時期も、これまでの2050年から2045年に前倒しする。


憲法裁判所の判断にしたがい、2030年以降の排出削減目標も1年毎に規定した。それによると、2040年には温室効果ガスの排出量を1990年比で88%削減する。


Fridays for Futureなど若者たちは憲法裁判所に、気候保護法の内容が不十分だとして訴えていた。それに対し憲法裁判所は、温室効果ガスを現在十分に削減せずに、その削減負担を後の世代に押し付けるのは、後の世代の自由を奪うことになると判断していた。


ドイツ政府は気候保護法改正案とともに、今後気候保護対策を講じる重点項目として、二酸化炭素課金の引き上げ、再生可能エネルギーの拡充、産業における水素化の促進、環境にやさしい移動の促進(電気自動車、公共交通の拡充)、環境にやさしい農業改革、脱炭素化住宅などを挙げている。さらに、森林の維持、拡大も積極的に行うという。


また2024年までに、エネルギー、産業、農業、住宅、交通などの部門毎に二酸化炭素など温室効果ガスの年間排出量の上限を規定するともしている。


これらの施策を実施するため、最高80億ユーロ(1兆円余り)の補助が用意される予定だ。しかし、これらの目標を達成するための具体的な施策が、まだ何も決まっていないのも事実。


その点で、今年2021年秋に行われる連邦議会選挙(総選挙)に向け、慌てて改正案を作成した感は否めない。

今年秋の総選挙では、気候変動問題が最も注目され、選挙戦の最大の焦点となる模様だ。それだけに、各党は極右政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」を除くと、ほとんどが環境政党のようになっている。環境政策をどうするかで、政党間の競争が激しくなっている。


Fridays for Futureなど若者たちは、石炭火力発電所と石炭露天掘り炭鉱を2030年までにすべて閉鎖するよう求めている(脱石炭)。それに対し、ドイツ政府は2019年1月、各界の代表で構成される委員会において2038年までに脱石炭を実現することで社会的コンセンサスを得ている。


ドイツ政府はその合意にしたがい、脱石炭を2035年に前倒しする可能性について2030年までに検討する。しかし今のところ、それ以上の前倒しが検討される予定はない。それでいて、今回大幅に引き上げた排出削減目標を実現できるのかどうか。石炭産業で二酸化炭素など温室効果ガスの排出を削減しないで、どこで削減できるのか。とても疑問だ。


この課題は、総選挙後の新政権に押し付けるということだ。


(2021年5月15日)
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