|
映画『ひまわり』と『ドクトル・ジバゴ』を見たことがあるだろうか。簡単にいえば、前者が第一次世界大戦、後者がロシア革命を舞台とした恋愛物語だ。
ぼくがこの2つの映画でとても印象に残っているのは、ひまわりだ。広野一面に黄色く咲いたひまわりの花が、とてもまぶしかった。そのひまわり畑は、今のウクライナを舞台にしていたはずだ。
ぼくの暮らしているベルリンでは今、スーパーマーケットにいくと、食用油を買う本数が制限されている。ウクライナ戦争で、ひまわり油の品不足が深刻になっているからだ。
欧州連合域内では、パーム油は食用として市販してはならない。それは、日本でも問題になっているように、パーム油製造のためにパーム畑を拡大して貴重な森林が破壊されているからだ。
ひまわり畑は、ドイツにはほとんどない。ひまわりの栽培には、ドイツの気候が適さない。ひまわりは、ドイツより北の東欧諸国などで栽培される。ロシアやウクライナが、主な栽培地となる。
それに対してドイツでは、食用油の原料として菜種が栽培される。それで、菜種油が製造される。ドイツでは春になると、真っ黄色の菜種の花が一面に広がる。
ぼくは、ドイツ西部デュッセルドルフの近郊で農業を営むヨハネス・パースさんの菜種畑を取材することができた。
ヨハネスさんは、「ノートブックがないと、農業はできない」という。地球観測衛星とドローンから送られてくる写真を分析しながら、菜種の栽培状況を監視している。まず、地球観測衛星で送られてきた写真で分析。それだけでは不十分な時、ドローンを飛ばす。
 |
|
ハイテクで持続可能な農業を目指すヨハネス・パースさん |
|
 |
|
地球観測衛星とドローンで管理される菜種 |
|
ヨハネスさんは、地元で農業を営む3代目。大学の農学部で勉強した後、代々続く農場を引き継ぐ決心をした。現在、乗馬クラブと馬のペンションを経営するほか、菜種やホップ、ライムギ、オオムギなどを栽培している。その他、農場で栽培した野菜を自家販売するほか、農場でできた農産物を使ってレストレンも経営している。
農場は多角経営。農業をテーマとしたテーマパークのようになっているといってもいい。地元の農場のほとんどはこうしたテーマパーク化して、家族連れを引きつけている。
ヨハネスさんはさらに、地元の農場をまとめて共同で、農場からでる生ゴミをコンポスト化して、それを肥料として販売している。
ヨハネスさんはいろいろな取り組みによって、地元の農業を持続可能にして活性化させ、若い世代が農業に関心を持つことができるようにとりまとめている。
農業を持続可能にするには、有機農業に切り替えるべきかとも考えたという。しかしヨハネスさんは、「必ずしもその必要はない」とする。
有機農業から学べることは学び、ハイテクで農機などの農業技術を革新しながら、従来の農業を続ける。そのほうが、農業は持続可能になると確信する。
(2022年6月05日)
|