エネルギー選択宣言ブログ

農民デモをどう見るか

 2019年10月22日、ドイツ全国各地で農民たちがトラクターを動員して、ドイツ政府の農業政策に反対する大規模なデモを行いました。首都ベルリンでも、周辺のブランデンブルク州からたくさんのトラクターが集まり、道路を封鎖しました。

ベルリンでのトラクターによる農民デモ

 これは、ドイツ政府が気候変動危機問題から、農業においてこれまで以上に環境保護規制を強化していることに反対したものです。

 農業ではエネルギー消費が多く、産業界においても農業が大きな環境汚染源になっているのは、このサイトにおいても何回となく指摘してきました。

 さらに、一部農薬の使用禁止や家畜の糞を肥料として散布することの規制強化など、従来の農法に対していろいろな形でメスが入れられようとしています。

 農薬は人体に影響を与えるだけではなく、植物の受精に必要なミツハチなどの昆虫が死滅する原因ともなっています。家畜の糞を散布することによって、地下水が汚染されています。

 ただ規制強化は、農民にとって生産コストが上がり、負担増になることを意味します。食品産業からの低価格圧力がとても強く、農民はそのコストを製品価格に転嫁することができません。

 農民は、板挾み状態になっています。最悪の場合、農業では生活できなくなります。

 温暖化など環境問題を考えると、これまで通りの農業はもう続けていくことができません。クレックナー農相も農民デモに対して、「農業は変わらなければならない」とコメントしています。

 農業団体は、ドイツの産業団体でも大きな団体の一つ。そのロビー活動によって、環境問題が農業政策に影響を与えないよう、これまで強い圧力をかけてきました。しかしもう、そうはいっておれなくなったのです。

 そうだからといって、農業が変わらないというだけでは先に進めません。短期間で、すべての農民に有機農業をはじめるよう求めることもできません。従来の農業から有機農業に換えるには、莫大なコストがかかります。

 農業改革には、手厚い支援策が必要です。環境保護規制を農民に押し付けるばかりでなく、そのために農民をどう支援していくのか、それを具体化させない限り、農民は見捨てられたも同然です。

 それでは、農民は納得しません。

 農業改革は、構造改革の問題でもあります。食糧供給を輸出に依存せず、できるだけ多く国内で農産物を栽培して、国内供給の割合を増やしていくを考えなければなりません。

 それが、環境保護にも貢献します。

2019年10月27日、まさお

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