農業とワット

まさお:水車小屋では、たくさんの麦が製粉されるのだったね。それは、運動エネルギーと位置エネルギーを使ったから可能になったのだった。水車小屋で、麦をたくさん製粉するには、たくさんの麦を水車小屋に持ってこないといけないね。製粉した後も、麦の粉がたくさんできるから、それも運ばないといけない。
 そんなたくさんの麦は、どうやって運んだんだろうか。

タロウ:それは、人が運んだんじゃないの。手押車とか使ったりしてさ。

ハナコ:うーん。そうかしら。それでは、たくさんの麦は運べないよ。たくさん運ぶには、たくさんの人がいるわよね。

タ:そうかな。。。

ハ:ああ、わかった!牛とか馬を使って、荷車をひかせたのよ、ぜったい。

ま:ハナコは、いいところに気がついた。そうだね。牛や馬などの家畜を使って、荷車をひかせたんだ。そうして、たくさんの麦を運んだんだ。
 水車小屋で、たくさんの麦を製粉できるようになったのは、農業によってたくさんの麦を栽培したからだともいった。でも農地は、開墾しないといけない。耕すことも必要だ。麦がたくさんできると、収穫するのもたいへんだね。
 どうしてたんだろうか。

ハ:それも、牛や馬を使ったのよ。そうしないと、農業だからといって、たくさん収穫できないよ。今、農業ではトラクターなどいろいろ機械を使っているでしょう。でも当時は、今のような機械がなかったら、牛や馬を使って農業したのよ。

車の使用が禁止されているドイツ北東部の島ヒッデンゼーでは、馬車が重要な交通手段だ

ま:その通りだ。そうして、 牛や馬を動力源として使っていたんだ。それは、エネルギーでいうと?

ハ:運動エネルギーでしょう。

ま:そうだね。当時牛や馬を使っていたことは、実は今も残っているんだ。車の性能を示す時、馬力ということばを聞いたことはないかな。

タ:ああ、あるある。そうだ。今の車は、小型車でもみんな100馬力を超えてるよ。ということは、馬100匹以上の力があるということ。。。

ハ:わあ、すごい。もうそんなに違うの。

ま:ある荷を運ぶのに、馬が何頭必要か。それを目安を示しているんだ。物を動かすために、馬が使われていたからだ。でも、ちょっと注意してくれよ。
 ある馬は、100キログラムの物を10メートル運ぶのに、1分かかったとしよう。もう一つの馬は、同じことをするのに2分かかったとしよう。100キログラムの物を10メートル動かしたのには、変わりはないね。馬は、それだけの仕事をしたんだ。
 でもそれだけでは、どちらの馬にパワーがあるのかわからないだろう。違うのは、1分かかったか、2分かかったかだ。
 ではどちらの馬に、パワーがあるんだろうか。

タ:そりゃ、1分で動かした馬に決まってるよ。

ま:そうだね。それを比較できるようにしないといけない。それには、どうすればいいんだろうか。

ハ:うーん。わかんない。

タ:ええーと??? ああ、わかった。かかった時間で割れば、比較できるよ。

ま:その通り。1分かかろうが、2分かかろうが、馬は100キログラムの物を10メートル運ぶ「仕事」をした。動かした全体が「仕事量」だ。その仕事量をかかった時間で割ると、単位時間当たりの仕事量がでる。それを「仕事率」というんだ。それで、馬1頭の仕事率を1馬力としたんだ。メートル法では1馬力は、75キログラムのものを1秒間に1メートル動かす仕事率となっている。
 それは、ジェームズ・ワットが馬を使って実際に計測したからなんだ。ワットはイギリスの人なので、フィート(距離)とポンド(重さ)だったけどね。それをメートルとキログラムに換算し、日本では1馬力を735.5ワットと定義したんだ。

ハ:難しい。わかんないわ。

ま:難しいね。ワットはね、水車小屋にあるような製粉機を使って馬の仕事量を測ったんだ。ワットは、蒸気機関を機械として使えるようにした人で、その性能を示すために、馬を目安にすることを思いついたんだ。

タ:へー。

ま:きみたち、この「ワット」ということば、どこかでみたことないかな。

ハ:ある、ある。電球とかに書いてあるわ。テレビやパソコンにも書いてある。「W」のことでしょう。

ま:そうだ。それでは、ワットは何を意味するんだろう。

ハ:電球は、ワット数が大きい方が明るいよね。テレビなどでは、ワット数が大きい方が電気をたくさん使っているのではないかしら。多分、そうだと思うわ。

ま:なるほど。ということは、どういうことだ。

ハ:ええ? わかんない。

タ:ひょっとして、時間当たりに使う電力の量?

ま:そうだ。消費電力といったりする。それが、馬でいえば仕事率だ。みんな、「キロワットアウア」ということばを聞いたことないかな。キロワットは、ワットの1000倍。1キロワットとは、1000ワットのことだ。それに、アウアをかけたことなるね。
 じゃ、アウアとは。

タ:ハイ、ハイ、ハイ。時間だよ。時間。

ま:ということは、「キロワットアウア」とは?

ハ:ある時間に使った電力量のことね。

ま:そうだね。農業のことから、ワットのことについてまで話してしまったけど、これでわかったと思う。馬力も電力もエネルギーのことをいっているので、同じ単位で示されるんだね。それだけでも、今回はわかってほしい。わかったかな?

ハ:ああ、難しかった。もうそれだけにして!

2021年6月09日、まさお

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関連サイト:
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