2022年6月18日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
菜種は貴重な原材料

菜種というと、なんだアブラナかと、黄色のアブラナの花畑しか思い浮かばないかもしれない。


あるいはサラダ油の原材料かなと、思う人も多いと思う。サラダ油と菜種油は、同じではないはずだ。だがここでは、それを説明することがこの記事の目的ではない。だから、その違いについては書かない。自分で調べてほしい。


菜種油というと、からだに害があるとか、遺伝子組み換えが怖いと思う人もあると思う。ただぼくの暮らすドイツでは、商用に遺伝子組み換え作物を栽培するのは禁止されている。遺伝子組み換え食品には表示義務もある。実際、店頭に並ぶ遺伝子組み換え食品はほとんどない。だから日本と違い、ドイツでは原則として安心しておれる。


ドイツは中国に次ぎ、世界第二位の菜種生産国だ。ドイツでは一時、菜種を原材料にしてバイオ燃料であるバイオディーゼルが盛んに製造されていた。バイオディーゼル100%の車の燃料も出回っていた。


しかしそれによって、食用に使われる菜種が減る。そのためドイツでは現在、バイオディーゼルの生産と利用が厳しく制限されている。その結果、バイオ燃料はガソリン(エタノールの場合)とディーゼル(バイオディーゼルの場合)に混合してしか使えなくなった。バイオディーゼルの場合、その生産はレストランなどから回収した廃菜種油を原材料にするのが中心になっている。


菜種は、単なる油の原材料ではない。たとえばバイオディーゼルを製造する過程で、副産物としてグリセリンができる。


ぼくはドイツ西部で、バイオディーゼルの製造プラントを取材したことがある。その時、その製造過程でできるグリセリンの用途がいかに広いかに、びっくりさせられた。


たとえば、そのグリセリンは狭心症用のニトログリセリンとなる。その他にも、浣腸、うがい薬、石鹸、歯磨き粉、その他化粧品にも利用される。


グリセリンには甘味があるほか、保存効果がある。だから、クッキーや飲料などの食品添加物としても使われる。


ウクライナ戦争でひまわり油が入ってこないなど、ドイツでは食用油の不足が目立つ。そのため菜種は現在、菜種油など食用、医薬品の原材料とするので手一杯になっているという。


ドイツでは、自家用車は電気自動車とすることで、政治決着している。しかし産業界の一部には、バイオディーゼルなどのバイオ燃料を自動車に使えるようにしてほしいとの意向もある。


前回、ハイテクで菜種を栽培するパースさんを紹介した。再エネプレスツアーでパースさんを取材できたのだが、そのプレスツアーに、バイオ燃料工業会のバウマン会長も同行していた。


会長はその時パースさんに、菜種をバイオディーゼルの原材料にしたほうが菜種を割高で引き取ってもらえると勧誘していた。


しかしパースさんは、それほど関心を示さなかった。


ぼくはサイトで何回も指摘したが、食用に使うものは原則として、車のバイオ燃料として使うべきではない。バイオ燃料は飛行機や特別な大型車など、電気化の難しいものに制限すべきだ。


(2022年6月18日)
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関連リンク:
ドイツのバイオ燃料工業会のサイト(ドイツ語)
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