2023年4月27日掲載 − HOME − 脱原発一覧 − 記事
ドイツの脱原発に思う

ドイツでは2023年4月15日をもって、すべての商用炉が最終的に停止された。廃炉となる。ドイツで原子力発電をはじめ、約60年の歴史に一つの岐路を迎えたことになる。


これを機に、ドイツの脱原発についてどう思うか、何人かの方からコメントをいただいた。


渡部めぐ
(福島県出身、福島県で高校を卒業後、ドイツで大学に入学するため準備中)

ドイツが原発の稼働を中止したのは勇断だと思います。

私は約1年半ドイツに住んでいますが、ウクライナとロシアの戦争で、電気代が高くなりました。その状況下で、電気の需要を満たす/電気代を安定させるにはやはり原発が必要なのではないかと正直思いました。

実際には、原発は技術で安全にできるという意見も多々耳にします。

しかし、福島の事故や隣国の戦争をうけ、この時期に原発を止めたドイツ。私は平和への願いを強く感じました。

ただ、電気代の高騰によって、暖房をほぼつけずに、厳しい冬の寒さを乗り越えるのは本当に大変でした。次の冬はもう少し暖かくして過ごしたいので、もっと再エネなどを使って改善されるといいなと思います。


酒井菜々子
(福島県高校生、フランス留学中)

こうしてまたドイツの、地球の環境が1歩良くなることをとても嬉しく思います。


渡部まお
(福島県出身大学生)

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ネッカーヴェストハイム原発
ドイツ南西部にあるネッカーヴェストハイム原発。写真は、ネッカーヴェストハイムの町役場前の道路から撮影した。向かって左側のドームが、2023年4月15日に最終停止された2号機。右側のドームは1号機で、2011年に最終停止した。現在、廃炉作業が行われている。
シュテフィ・リヒター
(ライプツィヒ大学日本学科元教授、「フクシマ」テキスト翻訳イニシアティブにも関わる)

この4月は、祝杯をあげる理由になるだろうか。その答えは、イエスとノーだ。

イエスといえるのは、これが広い市民社会運動の勝利だからだ。犯罪者扱いされながらも、現地で戦い続けてきた反原発運動。反原発活動家の多くはすでに高齢で、消耗している。わたしたちは彼らに感謝するとともに、バトンタッチをしたい。

ノーといわなければならないのは、まだ祝杯を上げる時ではないからだ。世界は4月15日の後も、(原子力の)危険に晒されている。現実に存在する核兵器によって、さらにまだ存在する原発によって。

わたしは、ギュンター・アンダース(1902-1992年)という哲学者が好きだが、アンダースは原発のことを「いつ爆発するかわからない核の時限爆弾」といったことがある。


トーマス・デルゼー
(放射線テレックス主宰、チェルノブイリ事故後に西ベルリンで市民測定を開始)

最後の原発が止まったからといって、問題がそれで終わったわけではない。廃炉によって、再炉作業員が被ばくするほか、周辺も放射能で汚染される。放射性廃棄物の中間貯蔵と最終処分の問題は、まだ解決されていない。


シュテファーン・ヴォルゼク
(ベルリンにある研究炉に対して反対運動を続けてきた)

ようやくここまできた。ドイツは2023年4月15日、原子力発電から最終的に撤退した。36基あった原子炉のうち、最後の原子炉が停止された。

反原発運動の勝利だ。チェルノブイリやフクシマのような原発事故が10年から20年毎に起こる可能性があることを考えると、(ドイツで原発事故が起こらなかったのは)幸運だったともいえる。


シュテフィ・レムケ
(ドイツ環境大臣)

石炭採掘開始後、原子力発電、自動車など新しい技術が登場した。新しい技術は人類を豊かにしたが、新しい技術を利用することのリスクを最初から十分に考えてこなかった。将来はそれを教訓にして、新しい技術の影響を考えて(新しい技術を)導入すべきだ。


ヴォルフラム・ケーニヒ
(ドイツ最終処分庁長官)

原発問題が教えてくれたのは、世代を超えて考えなければならないということだ。技術開発に魅力を感じる人も、新しい技術によって苦しむ人もいることを真剣に考えなければならない。

犯罪者扱いまでされながら戦ってきた反原発活動家のことを思うと、原発が止まる日は、ここドイツにおいて改革が起こったという喜びの日だといっていい。こうして社会として脱原発を達成するのは、大成功だ。


(2023年4月27日)
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関連サイト:
ドイツ環境省公式サイト(ドイツ語)
ドイツ最終処分庁公式サイト(ドイツ語)
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