2024年4月25日掲載 − HOME − 脱原発一覧 − 記事
最初の小型炉建設プロジェクトが頓挫

ぼくは2021年にベルリン@対話工房のサイトにおいて、「小型原子炉は救世主か」というテーマで、10回記事を掲載した。その10回目の記事「小型原子炉は一度にたくさん生産できない - 小型原子炉は救世主か(10)」の最後に、記事の一覧とリンクがある。


その第1回目において、「原発がなぜ大型化してきたか」について書いた。それは、大型化しないと採算性がないからだ。


それに対して現在、モジュール型小型炉(SMR)を開発して実現することに大きな期待がもたれている。ぼくはすでに、原発の採算性からしてSMRに対してとても懐疑的だった。


前回、毎年発表される「World Nuclear Industry Status Report」について取り上げ、そのデータから原発の数が減る傾向にあることを明らかにした。


同レポートは、SMRに対しても批判的だ。


その事例として、SMRを開発している米国の新興企業ニュースケールパワー社が、米国アイダホ州で予定されていた建設計画を昨年2023年11月に中止したことを挙げている。


圧力容器
廃炉によって撤去され、中間貯蔵施設に保管されている原子炉圧力容器の頭部分。廃炉中のドイツ北東部のグライフスヴァルト原発で撮影

ニュースケールパワー社は、アイダホ州の国立研究所にSMR6基(1基当たりの発電出力は8万キロワット弱)を設置して、2029年から稼働する計画だった。それによって、再生可能エネルギーによる発電によって起こる発電量の変動を緩和することが計画されていた。


ニュースケールパワー社のSMRは、米国原子力規制委員会(NRC)がこれまでに設計を認可した唯一の小型炉だ。


しかし多額の補助金を投入しても、SMRの発電コストが高く、再エネで発電された電力に比べ、価格競争力がないことが判明したという。


ニュースケールパワー社はそれを、資材高騰によるものだとしている。しかしぼくはすでに2021年に指摘したように、採算性のなさは資材高騰によるものではなく、SMRの構想そのものに採算性がないからだと思う。


前述のレポートも、現在入手できるデータを分析しても、SMRの開発と実用化にかなりの遅れが出ており、現段階でSMRを経済的に運転できる見込みはないとしている。


建設期間も短く、安価に設置できることが売りのSMR。だがそれが、まったく幻想であることが明らかになったわけだ。


ドイツ環境省下の放射性廃棄物処分安全庁(BASE)が小型炉構想の評価を委託したスタディにおいても、小型炉、特に軽水炉以外の構想において、小型炉の運転から処分までの安全性が十分評価されていない問題があるとする。小型炉であっても、放射性廃棄物を処分しなければならないのは避けられないと警告する。


(2024年4月25日)
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関連サイト:
World Nuclear Insdustry Status Reportの公式サイト(英語)
小型原子炉を開発するニュースケールパワー社のサイト(英語)
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