2025年9月09日掲載 − HOME − 脱原発一覧 − 記事
原発の建設には時間がかかりすぎる

ぼくはこれまで、原発に依存することの問題をいろいろ指摘してきた。その一つが、原発の建設に時間とお金がかかること。原発に依存しても、発電によって二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しないが、結局は温暖化対策にはならない。


それはなぜか。


原発の建設には、時間がかかるからだ。建設計画の立案から建設許可を取るまでに時間がかかるし、建設がはじまっても当初の計画通りに完成することはない。


それは、フィンランドやイギリス、フランスでの原発新設の状況を見てもわかる。原発の建設は予定通りに終わることはない。必ず遅れるといってもいいし、計画が頓挫することも多い。その遅れと計画倒れは、中途半端なものではない。


原発の建設には、遅れることも考えて計画から20 - 30年は見ておかなければならない。


それでいて、今から原発を計画、建設して2050年までに脱炭素化を実現できるだろうか。


2050年まで25年しかないことを考えると、今のうちにすべて必要な原発の建設計画が立案されていないと、原発は2050年までに完成して、発電することはできない。


原子力産業のキャパシティを見ると、全世界でたくさんの原発を並行して建設するのも無理だ。それは、「急激な原発拡大は自殺行為」でも書いた。


原発に依存しても、2050年までに脱炭素化するのはとんでもない幻想であることがわかると思う。


原発を記念碑に
2024年7月01日にベルリンの技術博物館で行われたシンポジウム「原発を記念碑として残しておくべきか?」から。

今月2025年9月はじめ、米国サンフランシスコを拠点とするグローバル・エネルギー・モニター(Global Energy Monitot)というエネルギーNGOが発表したところによると、世界全体で発電容量5億6600キロワット分の原発の建設計画が、実現できなかったという。計画されたものの約40%に相当する。この頓挫した分の発電容量は、実際に完成して稼働中の原発と廃炉中の原発の発電容量を合わせた発電容量5億1700キロワットをも上回る。


深刻なのは、ヨーロッパだ。1億2200キロワット分の原発計画が頓挫し、6800万キロワット分の原発が廃炉となった。稼働中の原発を見ても、90%が稼働して35年以上も経っている。


稼働中の原発が2050年まで稼働しているかどうか、はなはだ疑問だ。早急に代替の発電所が必要になる。


ヨーロッパでは現在それに対し、GEMが把握しているところでは、発電容量6億キロワットを超える風力発電施設と太陽光発電施設がすでに計画されているか、これから計画されるという。この数値は、世界全体の現在の原発発電容量をも上回る。


現在ヨーロッパで建設中の原発の発電容量を見ると、全体で930万キロワットにすぎない。これは、高経年化した原発に取って代わるだけにすぎない。建設中の原発が完成しても、当分の間原発の発電容量が増えるわけではない。


風力発電、太陽光発電など再エネ発電では、計画立案から稼働開始まで1年から4年と、短い期間で発電施設が完成する。現在建設中の原発が完成する頃には、風力発電と太陽光発電で6億キロワット分の発電容量がすべて完成している可能性さえもある。


その時点で、再エネ発電によって老朽化した原発をすべて代替しているはずだ。


いくらこれから原発の建設を計画しても、原発建設の過去の経験からすると、建設のテンポが俄然遅いし、計画が頓挫してしまう可能性もある。


それでいて、原発が温暖化、気候変動の救世主になるのか。とんでもない幻想ではないのか。もっとしっかりと原発建設の現実を把握する必要がある。


(2025年9月09日)
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関連サイト:
Global Energy Monitor(GEM)の関連プレスリリース(英語)
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