ドイツは放射性廃棄物を国内で地層処分する。現在、使用済み核燃料とガラス固化体(再処理によって排出された廃棄物)の高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)を最終処分する候補地を選定するプロセスが進行している。
現在行われているのは、文献調査によって現地で地上調査を行う地域を10カ所に絞る作業だ。2027年末までに終了する予定だ。
文献調査されている地域は、ドイツ全土の54%にも渡る。最終処分候補地を選定するドイツ最終処分機構(BGE)が2020年9月28日に発表した。対象となる地域は、地層が粘土層ないし岩塩層、結晶質岩層からなる地域。過去のボーリング調査や過去の地層に関する資料、あるいはコンピュータによる3Dシミュレーションなどによって、地層の特性だけが地質学的に審査された。
日本ではまず、科学的特性マップによって可能性のある地域が公表された。その後に、文献調査に応じる最終処分候補地が公募され、応募された自治体地域に関して文献調査されている。
それに対し、ドイツは公募制を採用しない。それはなぜなのか。
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中間報告書で最終処分候補地に挙げられた地域。青と紫の地域が粘土層、緑と薄青の地域が岩塩層、肌色の地域が結晶質岩層(出典:Bundesgesellschaft für Endlagerung(ドイツ最終処分機構)) |
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公募制にすると、応募された地域しか調査しないことになるからだ。ドイツは最終処分を受け入れてもらうため、住民参加と調査の透明性を優先させる。全土の隅から隅までを対象にして、候補地を絞っていく。日本が候補地を公募するのは、まず地元の意志を確認して最終処分地としてアクセプタンスしてもらうことを事前に優先させる。
排出者責任の原則からすれば、核のゴミを国内で処分するのは当然の話。現段階では、地層に核のゴミを最終処分するのが一番安全だとされる。しかし地層の大きさには限界がある。国内に、最終処分に適する地層があるかどうかは保証されない。国内で地層を調査し、より安全性が確保できるところが、国内で最も安全に核のゴミを最終処分できるところとなる。
国内で核のゴミを処分するには、これ以外の選択方法はない。
しかし日本のように公募によって応募された地域だけを調査していて、国内で最終処分に最適な地を選定したことになるのだろうか。ぼくには疑問だ。文献調査の段階から調査対象を絞っては、国内で最も適切な地を選定することをはじめから放棄している。
ドイツの手法では、徹底して国内で最も安全な候補地を探すことにはなる。しかしそのためにたいへんな時間と手間がかかる。その上選定された候補地に対し、地元住民のアクペプタンスを得ることができるかどうかの保証もない。しかし、国内で最適な候補地を選定したことにはなる。
日本の手法のほうが、かなり早く最終処分地を選定できる。選定された候補地に対して、地元のアクセプタンスも得やすい。
しかしそれでは、まあこの程度安全ならいいやという最終処分地になってしまわないだろうか。安全性を追求する姿勢はどこにいったのか。
(2025年1月07日) |