2026年10月21日掲載 − HOME − 脱原発一覧 − 記事
モジュール型小型炉の開発で何か忘れていないか?

ぼくは2021年にベルリン@対話工房のサイトにおいて、「小型原子炉は救世主か」というテーマで、小型炉の問題について10回記事を掲載した。その10回目の記事「小型原子炉は一度にたくさん生産できない - 小型原子炉は救世主か(10)」の最後に、記事の一覧とリンクがあるので参照されたい。


小型炉の問題ではさらに、「最初の小型炉建設プロジェクトが頓挫」の記事で、ドイツ環境省下の放射性廃棄物処分安全庁(BASE)が、小型炉、特に軽水炉以外の構想において、小型炉の運転から処分までの安全性が十分評価されていない問題があるとする。小型炉であっても、放射性廃棄物を処分しなければならないのは避けられないと警告していることを書いた。


世界では、モジュール型小型炉(SMR)が気候変動対策やエネルギー安全保障を強化する「救世主」でもあるかのように、熱狂的に開発が進んでいる。


世界全体で80種以上のSMRが開発されているといわれる。ほとんどがまだ基本設計段階だが、その多様性はその関心の高さを裏付けるとともに、危険を感じざるを得ない。多様性の中で、小型炉の開発動向をどう把握、追跡して管理し、規制を調和、強化させることができるのかどうか疑問に思う。同時に、安全性をどうチェックして確保するのかと、核拡散をどう防止するつもりなのかも不安だ。


もう一つの大きな問題は、小型炉といえ使用済み核燃料と放射性廃棄物が排出されるが、それをどう管理して処分するのかわからない。これらの問題にかかる資金は、いったい誰がどう負担するのかも注意して監視しなければならない。


開発中の小型炉は大きく、水冷却炉(軽水炉、重水炉)、高温ガス炉、液体金属冷却高速炉、溶融塩炉に分類されれると思う。さらに、ここにきて注目度を上げている送電網のない遠隔地の電力供給に適するとされる超小型のマイクロ原子炉もこれに加えることもできる。


ぼくは30年以上に渡って原子力発電問題を取材してきたが、小型炉の分類が多様なのに驚くと同時、一体これはどういう技術なのかとまったくわからないものが多い。さらに、そこから排出される使用済み核燃料や放射性廃棄物はどう処分されるのかもまったく想像がつかない。


除染
廃炉中のドイツ北東部のグライフスヴァルト原発では、原発全体を細かく切断して、放射能で汚染された部材を一つ一つ除染していく。写真は、圧力水で除染している様子。除染作業はたいへんだが、こうして除染しないと放射性廃棄物が増えるばかりでその処分に困る

先日オンラインで、経済協力開発機構の下にある原子力機関(OECD/NEA)において小型炉の開発による使用済み核燃料と放射性廃棄物の処分など小型炉のバックエンド(後処理)に関して科学的・技術的情報を収集して分析するWISARD(Waste Integration for Small and Advanced Reactor Designs)プロジェクトに参加するドイツ人のオリヴァー・ブスさんの話を聞く機会があった。


プロジェクトは2025年から2028年の間実施されるが、ぼくにはようやくそういうことをはじめたかとしか思えない。


ブスさんによると、小型炉では核燃料のウラン濃縮度が20%どころか40%にも濃縮され, 使用済み核燃料を現在の最終処分構想のままで最終処分していいかどうかまだはっきししていないという。既存原発の核燃料のウラン濃縮度は最高6%くらいだ。さらに高温ガス炉に使われるTRISO燃料になると、その使用済み燃料の特性はまだまだよくわかっていないという。


溶融塩炉で使われる使用済み液体核燃料はどう処分すべきかも、まだまったくその構想がないとする。


さらに冷却材に溶融塩や液体金属を使う小型炉では、その冷却材をどう輸送、保管して使い、使用済み冷却材をどう処分すべきなのかもまだまったく考えられていない。


これら未知の問題をはっきりさせるのが、WISARDプロジェクトの課題なのだという。


世界中で既存原発から排出される使用済み核燃料と放射性廃棄物の処分に頭を悩ませている状況下において、小型炉に関してまだこんな未知なことばかりでいいのか。小型炉に熱狂して建設の話までする開発者や電力業界、それに踊らされている政治家の愚かさに呆れてしまう。一体何を考えているのかと思う。既存原発の教訓から何も学んでいない現実に開いた口が塞がらない。


この現状を見るに、小型炉が実際に建設され、稼働される前に、小型炉の開発者と運転者に対して小型炉のバックエンドの問題とその資金負担をはっきりさせることを小型炉設計の一部として義務付けることが必要だ。それが規定されない限り、小型炉の建設と運転を許可しないことを世界的な小型炉基準とすべきだ。


ぼくたち一般市民も小型炉の動向を監視するとともに、バックエンドに関わる問題を事前に解決しておくようその構想を早急に策定することを要求しないと、既存原発で犯した過去の過ちを再び繰り返すことになる。


(2026年10月21日)
→記事一覧へ
関連記事:
最初の小型炉建設プロジェクトが頓挫
ヨーロッパの原発は対ロシアのアキレス腱
原子炉はなぜ大型化したか
関連サイト:
ドイツ環境省下の放射性廃棄物処分安全庁(BASE)が小型炉構想の評価を委託したスタディ
経済協力開発機構|原子力機関(OECD/NEA)のWISARDプロジェクトのサイト(英語)
この記事をシェア、ブックマークする
このページのトップへ