2026年1月09日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
ドイツ、二酸化炭素の排出にブレーキ

ドイツの環境シンクタンク「アゴラ・エネルギー転換」は2026年1月07日、ドイツの2025年の二酸化炭素の排出状況について発表した。それによると、昨年のドイツの二酸化炭素排出量は6億4000万トン。前年比で1.5%、900万トン減ったにすぎない。1990年比では、ほぼ半分の49%削減したに留まっていた。


数値は、アゴラが2025年のエネルギー年間データから試算した。ここで二酸化炭素とは、二酸化炭素だけではなく、温室効果ガス全体のことをいう。わかりやすくするため、アゴラの発表では二酸化炭素と単純に表記されている。


EU(欧州連合)では、温室効果ガス排出削減目標の分担(ESR)規則が各部門ごとに削減目標を規定している。しかしドイツでは、輸送部門と一般民生部門における二酸化炭素の削減に関して個々に国内規制が強化されず、全体での二酸化炭素排出が削減すればいいことになっている。


そのためこの2つの分野では、二酸化炭素の排出をなかなか削減できないどころか、排出量が増える状態が続いている。今回も、その影響がはっきり現れた。



その一つの大きな要因は、ドイツでは交通において電気自動車と、一般家庭において暖房用ヒートポンプへの切り替えがなかなか進まないからだ。


2025年のヒートポンプの販売台数は、ガス暖房機より30万台多かったにすぎない。電気自動車の販売台数は、新車登録数のほぼ20%にまで増えたが、電気自動車の年間販売台数は50万台を超えたにすぎない。


アゴラは、産業界や輸送、暖房において電気仕様の技術に切り替えるコストが高く、電気化への切り替えにブレーキをかけているとする。


再生可能エネルギーを暖房や輸送、産業活動に使いやすくなるように、安い電気料金、電気化へのインセンティブをもたらす適切な二酸化炭素税、信頼できる補助制度など、脱炭素化を進めるための施策が必要だとする。


2025年に二酸化炭素の排出を最も削減したのは、産業界だった。米国の関税政策、製鉄と化学産業の原材料の過剰供給、内需の減少などで、エネルギー集中的産業の生産が減少した。それに伴い、産業界からの二酸化炭素の排出が前年比で7.2%減少した。


ただアゴラは、公共補助によってグリーンスチールや製造時の二酸化炭素排出量を大幅に低減したコンクリート(グリーンクリート)の需要を拡大させ、ドイツの技術の国際競争力を強化するばかりでなく、気候変動対策として貢献する政策を積極的に進めるべきだとする。


ドイツでは2025年、二酸化炭素排出のテンポにブレーキがかかる形になった。EU(欧州連合)に約束した2030年までの二酸化炭素排出量の削減を守るためには、ドイツは今年2026年から毎年、前年比で平均3600万トンの二酸化炭素の排出を削減していかなければならない。


これは、2025年に前年比で削減した排出量の4倍にも相当する。前述したようにEUの規定では、発電、輸送、一般民生(特に暖房)などの部門ごとに排出基準値が設定されている。


ドイツでは輸送と暖房による二酸化炭素排出の削減が進んでいないことから、ドイツはいずれ、輸送と暖房に規定された二酸化炭素の排出量まで低減できないと、排出権取引証書を購入することで相殺しなければならなくなる。


そのコストは2030年までに、340億ユーロ(約6兆2000億円)にまでなる可能性があると、アゴラは警告する。さもないとドイツは、EUに莫大な違約金を支払わなければならなくなる。


あるいは、これまでドイツ政府が拒否してきた二酸化炭素を分離、回収して地下層に閉じ込めるCCS技術を導入するのか。かといってCCS技術の実用性は未知の上、たとえ実用化できても2030年までに十分に二酸化炭素の排出を削減できる見込みはないと思う。


(2026年1月09日)
記事一覧へ
関連記事:
ドイツ、二酸化炭素の排出を90年比で半分に削減
ドイツ、二酸化炭素の排出を記録的に削減
ドイツの気候変動対策は不十分
関連リンク:
アゴラの2026年1月07日付けプレスリリース(ドイツ語)
この記事をシェア、ブックマークする
このページのトップへ