ドイツの環境シンクタンク「アゴラ・エネルギー転換」が2025年1月07日に発表したところによると、昨年2024年のドイツの二酸化炭素排出量は6億5600万トン。前年比で1800万トン削減した。1990年比で、ほぼ半分の48%削減したことになる。
気候保護法に記載された2024年の二酸化炭素排出量を3600万トン下回った。
数値は、アゴラが2024年のエネルギー年間データから試算した。ここで二酸化炭素とは、二酸化炭素だけではなく、温室効果ガス全体のことをいう。わかりやすくするため、二酸化炭素と単純に表記されている。
しかし、ドイツは交通部門と一般民生部門における二酸化炭素の削減に関して国内規制が強化されず、この2つの分野で二酸化炭素をなかなか削減できない状態が続いている。そのため、EUの温室効果ガス排出削減目標の分担(ESR)規則に規定された削減目標は、1200万トン下回った。
そのため、EUで規定された削減目標を遵守するため、排出権取引市場において排出権証書を購入し、その分を相殺しなければならない。
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ドイツ西部にある化学工場団地には、石炭火力発電所があった。写真左の発電所はすでに、脱炭素化のプロセスで停止された。右の発電所は煙突から煙が出ており、まだ稼働中だ。 |
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アゴラによると、二酸化炭素の排出が低減したのは、主に発電部門において排出が削減されたからだという。エネルギー部門の削減分は、全体の80%を占める。
1つは石炭火力発電所が停止され、全体で6.1GWの発電容量が削減された。これは、石炭火力発電全体の16%に相当する。
さらにドイツでは太陽光発電施設が記録的に増加しており、再生可能エネルギーで発電された電気は、総年間電力消費の55%を占める。同時に、ウクライナ侵攻戦争後の国内での電力価格の高騰で電力の輸入が増加し、輸入電力の49%が再エネ電力と、発電における再エネの割合が増加したことも、二酸化炭素排出の削減につながった。
さらなる要因として、天候が穏やかで暖房によるエネルギー消費が減ったこと、景気後退で産業界の生産量が減ったことを挙げることができるという。
しかし景気後退の影響とはいえ、産業界からの二酸化炭素の排出は前年を300万トンと、わずかに上回った。
これは、再エネへのエネルギー転換が進んできてはいるものの、産業、交通、民生において改革が進んでいないことも意味する。たとえば、暖房のヒートポンプへの切り替えや、電気自動車の普及が停滞ないし後退し、ヒートポンプの売り上げは前年比で44%減、電気自動車の新登録台数は前年比26%減と、前年を下回った。
アゴラは交通、民生部門では、これまでの傾向が続くとする。ESR規則に規定された削減目標を守るため、ここ当分排出権取引で排出権を買わなければないらないとも予測する。さもないとドイツは、EUに違約金を支払わなければならなくなる。
ドイツではショルツ中道左派政権が崩壊し、2月に連邦議会(下院)選挙が行われる。今のところ、保守系中心の政権が誕生する見込みだ。
新政権が安定し、産業、交通、民生部門にバランスのとれた適切な施策を講じて、気候変動対策に十分な投資を促進しない限り、ドイツは今後EUの目標どころか、国内の目標さえも遵守できなくなると、アゴラは警告する。
(2025年1月08日)
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