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ドイツ政府の気候問題専門家協議会は2023年8月22日、ドイツ政府が立案した今年2023年の気候保護計画は不十分だとする審査結果を発表した。
気候保護法では、2045年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルを目指すプロセスにおいて、政府が前年の成果をもとに順次、政府の気候変動対策を更新して次の気候保護計画を立案。政府の目標を、段階的に達成することが規定されている。そのため、政府の気候変動対策に対して順次、第三者機関に見解を求める。気候問題専門家協議会は、その第三者機関となる。
今回の見解では主に、2023年の気候保護計画によって2030年までに守るべき政府の目標を達成できるかどうかが審査された。協議会は2030年までに、最低2億トンの二酸化炭素が過剰に排出されると予測している。
ドイツの気候変動対策は、130の施策によって広範囲に取り組まれている。しかし気候問題専門家協議会によると、政府から提供されたデータからは気候変動対策の全体像が見えないと、厳しい評価が下された。
市民の移動を自家用車から公共交通に切り換えることを目的に、今年2023年5月1日から全国のローカル線・都市交通で有効な月額49ユーロのドイツチケット(「月額49ユーロで全国乗り放題のドイツチケットが好調」)が導入されている。
しかしそれにしても、経済省がそれによって400万トン余りの二酸化炭素の排出を削減できるとしているのに対し、交通省は2200万トンも削減できるとする。政府内において、まったく効果の評価が統一されていない。
これまで気候変動対策では、各部門毎に二酸化炭素の排出削減目標を規定し、その達成度に応じて毎年各部門毎に適切な対策を講じることになっていた。交通部門では2030年までに、二酸化炭素の排出を1億2000トン弱削減するとされている。
しかし政府は交通大臣の要望で、各部門毎の削減目標を交通部門に対して撤廃し、ドイツ全体の削減目標に組み入れて全体目標から達成度をモニタリングすることに変更したばかり。
これは、削減対策の進まない交通部門に配慮して、対策の厳しさを後退させたともいえる。
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| 気候問題専門家協議会が2023年8月22日に発表した政府の気候変動政策に対する見解書 |
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こうした政府のルーズな気候変動対策に対して今回、気候問題専門家協議会が釘を刺したともいえる。しかしショルツ首相は、政府の対策で十分2030年までの削減目標を達成できると、依然として政府の政策を過大評価している。
ドイツは2030年までの削減目標を達成できないと、欧州排出権取引において他国で排出削減されたことを証明する排出権証書を購入してドイツの不足分を補うか、欧州委員会(EU)に高額の違約金を支払わなければならなくなる。
ドイツ政府は目標を達成できなかった場合、違約金を支払うのではなく、排出権証書を購入する予定だ。しかしその時点で不足分を補うのに十分な排出権証書が市場で取引され、購入できるかどうかの保証はまったくない。
ぼくは、ドイツでカーボンユートラルが達成されるまで生きていたいと思っていた。それは、日本ではぼくが生きている間にカーボンニュートラルとなることはまずあり得ないと思っているからだ。それで、ドイツに期待したわけだった。
しかしその夢はもう、昨年2022年の間に捨ててしまった。それは、今回の気候問題専門家評議会の見解でも立証されたようなもの。しかしぼくは、気候関連データからそう思ったのではなく、ドイツ社会全体の動きからして諦めざるを得ないと思った。
ぼくがなぜ、そう思ったのか。それはまた、別の機会に「エネルギー選択宣言ブログ」に書いておきたい。
(2023年8月30日)
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