2017年3月21日掲載掲載 − HOME − エネルギー選択宣言一覧 − 2章記事
高圧送電網は必要ない

ドイツのエネルギー転換政策では当初、電力供給システムを分散化するため、110kVの送電網を主体にした送電網へ構造改革する方針でした。それによって、380kVによる長距離高圧送電をできるだけ少なくする方向で進んでいました。しかし大手電力が再生可能エネルギーに進出しない中、ドイツは大型設備で大手電力も進出しやすい洋上風力発電を促進する政策に転換します。その結果、前述したように海に面するドイツ北部から南部に多量の電力を送電する高圧送電線を整備しなければならなくなります。


現在ドイツで進行している送電網の整備計画は、ぼくには大型設備を有する大手電力の救済措置だとしか思えません。大手送電事業者の一つテーネット(TenneT)社の責任者は、「電力を地産地消すれば、送電網整備にお金がかからない。それが理想だ。でも、ドイツ政府は政策を転換してしまった」と、ぼくに話してくれました。分散化された地域配電網を障害が発生しても問題ないように冗長性(余剰性)のある110kV送電線でネットワーク化すれば、国土全体に分散型発電施設をベースにして連系する電力供給システムができます。多量に発電する大型発電施設がなくなれば、高価な380kV高圧線は必要ありません。その分コストを削減でき、電力供給の安定性も増すはずです。ある地域配電会社の技術者は、ぼくにこう話してくれました。


実際、ドイツ北東部を拠点にヨーロッパ中で風力発電パークを建設しているエネルトラーク(ENERTRAG)社は、風力発電パークから110kVの地中ケーブルだけで送電しています。


(2017年3月21日掲載)

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