2017年3月22日掲載 − HOME − エネルギー選択宣言一覧 − 3章記事
3.夜間、電気を使わないようにする
原子力発電とベースロード電力

ベースロード電力は、最低限必要な電力のことです。年間を通して、常に一定量の電力が供給されます。電力需要の少ない夜間に必要とされる電力がベースになります。それを供給するのがベース電源です。ベースロード電源ともいわれます。日本では、原子力発電がこのベースロード電源になっています。


平成26年4月の日本政府の第4次エネルギー基本計画は、原子力発電を「優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安定性の確保を大前提に、エネルギー需要構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である」と規定しています。エネルギー基本計画はさらに、 ベースロード電源として一般水力(流れ込み)と石炭、地熱を挙げています。発電コストが安く、昼夜安定供給できるからです。その4年前に発表された第3次計画では、原子力は「供給安定性・環境適合性・経済効率性を同時に満たす基幹エネルギー」と規定され、「政策総動員により、最大限の導入を図る」とされていました。


その4年間で、日本のエネルギー政策では何が変わったのでしょうか。何も変わっていないと思います。変わったのは、3・11東日本大震災によって東京電力福島第一原発で大惨事が起こり、すべての原発が停止されたことだけです。最新の基本計画において、原子力は文面上、石炭と水力、地熱と同等にされました。しかし発電コストが低いからと、現在も原子炉の再稼働を進め、第3次計画と同じように原子力発電を最大限利用していくぞといっているにすぎません。


なぜ、原子力がベースロード電源として重要視されるのでしょうか。


それは、原子力発電では原子炉が常にフル稼働し、事故がない限り昼夜安定して同じ量の電力を供給してくれるからです。ただ常にというのは正確ではなく、約1年のサイクルで原子炉を停止して定期検査を行い、その時に核燃料を3分の1ずつ交換します。その停止期間は、その都度異なります。その期間に定期検査ばかりでなく、改造されることもあるからです。30日から60日ほど停止します。日本ではタービンの解体が義務付けられているなど、他国に比べて定検期間が長く、原子炉毎の平均年間稼働率が90%未満となっています。これは、国際的にもかなり低い稼働率となっています。原子炉の停止期間中は、原発のリザーブとして用意されている火力発電所でその不足を補います。


さらにこれに、日本の特殊事情が加わります。日本では、これまで大手電力会社の電力供給エリアが決まっていました。ヨーロッパ大陸では各国間で電力をやりくりするための連系線があり、いつも各国間で電力を輸入、輸出(融通)し合っています。しかし日本では、自社の供給エリアで電力が足りなくなって、他の大手電力から電力の不足分を補うのは恥ずかしいことだとされてきました。恥をかかないため、大手電力各社は十分すぎる以上のリザーブ発電所を持って安定供給を確保してきました。それは、主に火力発電所です。日本の原子力発電所にいくと、近くに大きな火力発電所が立地しているのをよく目にします。


3・11後にすべての原発が停止したにも関わらず、日本では電力不足が発生していません。それは、リザーブとして確保されている火力発電所のおかげでした。日本には、それほどたくさんの発電容量があるということです。


(2017年3月22日掲載)

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