2018年5月08日更新 − HOME − 放射線防護 − 記事
福一原発事故から7年(4)
− 汚染地域での農作業 − 
農民は外で農作業をして大丈夫なのか?

筆者が知り合った避難者の中には、自分は農民だから早く土のある故郷に戻って農業をしたいという方が何人もいました。たとえ避難指示が解除されても、外にいる時間が長いと被ばく線量が増えるのは避けることができません。特に、外で働く時間の長い農民には、それが大きな問題になります。


それに対処するには、どうすればいいのでしょうか。


左は、「帰還し営農される農家の皆様へ」と題して、福島県が配布しているチラシの一部です。そこには、被ばくをできるだけ少なくするため、農作業においてどういうことに注意すべきかが書かれています。


筆者は、チェルノブイリ原発事故後にドイツの農民はどうしていたのかと、当時ドイツで最も汚染されたドイツ南部バイエルン州で営農していた有機農民を取材したことがあります。その時農民は、外で農作業する時間をできるだけ少なくするように工夫するほか、自分で外で農作業した時間を記録して、被ばくしすぎないようにコントロールしていたといっていました。


それについては、拙書「ドイツ、低線量被曝から28年、チェルノブイリは終わっていない」(言叢社刊)でも書きました。


福一原発事故後、避難指示解除準備区域では農業を営むことが認められていました。営農しなくても、農地に生えた草を野焼きすることも認められていました。


避難指示解除前であろうと、解除後であれ、実際に営農するかしないかは、個人の判断の問題だと思います。筆者のように第三者の立場では、営農するなとも、営農して大丈夫だともいえません。自分自身で判断してもらうしかありません。筆者には、農作業で被ばくする心配があるので、何に注意すべきか、アドバイスすることしかできません。


まず、福島県の手引きを見てみましょう。手引きには、
1)農作業を行なうときは、なるべく長袖、長ズボン、マスク等を着用しましょう。
2)土ぼこりがたつ所での飲食や喫煙を避けましょう。
3)外での作業が終わった後は、チリやホコリを室内に持ち込まないように服を着替えましょう。
4)農作業後は、手足や顔など露出した部分を良く荒い、うがいもしっかり行いましょう。
5)汚れた作業服などは、洗濯して清潔に保ちましょう。
と書かれています。


福島県が配布している手引きを営農する場合の留意点だと見れば、この手引きは内容的に間違ってはいません。


ここでは、当人の被ばくをできるだけ少なくすることと、当人が原因となって家族や他の人が二次被ばくすることを避けなければなりません。


ただ筆者だったら、そのために手引きの内容をもう少し厳しくします。

1)農作業を行なうときは、必ず長袖、長ズボン、帽子、マスク等を着用しましょう。
2)土ぼこりがたつ所での飲食や喫煙をしてはなりません
3)外での作業が終わった後は、チリやホコリを室内に持ち込まないように服を脱ぎ、まずシャワーをしてからだ全体をきれいに洗い流しましょう(家族が一緒に使う湯船には浸からない)。脱いだ服は、ビニールの袋に入れて洗濯にまわしましょう。
4)農作業後は、シャワーをするほか、うがいもしっかり行いましょう。
5)汚れた作業服などは、下着も含めて他の洗濯物とは別に洗濯して清潔に保ちましょう。


また、定期的に検診してもらうこともたいへん大切です。


たとえば福島市の市民測定所は、内部被ばくを測定できるホールボディカウンターでこどもたちを測定してきました。しかし今、測定してほしいというこどもがまったくこなくなってしまい、ある農業組合と提携して農民の内部被ばくを測定しています。


(2018年5月03日)


福一原発事故から7年
(1)避難指示区域 (2018年4月29日)
(2)避難指示解除 (2018年4月29日)
(3)食品の放射能汚染 (2018年4月30日)
(5)汚染土壌の処分 (2018年5月08日)

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