たとえ避難指示が解除されても、「プレコンバック」といわれる黒いバックがあちこちに山のように保管されています。放置といっていいくらいです。プレコンバックには、放射能に汚染されたガレキや汚染された土壌などが入っています。除染作業によって回収された除去土壌、除去廃棄物などです。
これらは、放射性物質で汚染された廃棄物です。
汚染廃棄物は、汚染が漏れないように処分されなければなりません。しかし、それを最終処分する施設がまだありません。そのため、最終処分場ができるまで、それを中間貯蔵しておかなければなりません。その中間貯蔵施設が、事故原発を囲むような形で帰還困難区域の大熊町、双葉町にできています。現時点では、最長30年間中間貯蔵するとされています。
ただ、その量は生半可ではありません。最大2200万平方メートルあると推計されています。これだけたくさんの汚染廃棄物をどう処分すればいいのでしょうか。
上の写真は、浪江町にある焼却設備です。ここでは、その北に位置する南相馬市の一般家庭から排出されたゴミも焼却されています。汚染地域の家庭で排出されるゴミも、汚染されている可能性があることを忘れてはなりません。
汚染されたゴミを焼却するには、特殊のフィルターを装備していないといけません。それでも、安全だという保証はありません。また、残った灰には放射性物質が含まれています。灰も、安全に処分されなければなりません。
でも土壌は、焼却しても容量が減りません。そのまま、処分するか、容量を減らすためのその他の方法が必要です。
そこで、考えられたのが汚染土壌を公共事業で再利用するということです。そのためには、土壌の汚染度に応じて、再利用していいか、だめかの基準が必要になります。
日本の環境省は、そのための土壌汚染解除基準(上限)としてセシウムで1 kg当り8000 ベクレルを規定しました。当初は、3000ベクレル/kgとすることも検討されたましたが、汚染土壌をできるだけ減量するため、最終的に8000ベクレル/kgで確定されました。
ただ日本の原子炉等規制法では、100ベクレル/kg以上のものは「放射性廃棄物」として原発敷地内で特別に管理することが求められます。ここでは、その80倍のものが一般住民の生活する環境で再利用されることになります。これでは、汚染土壌を減らすためにわざわざダブルスタンダードをつくったとしか思えません。
でも環境省は、それに対してこういってくると思います。
原子力法制化でいう放射性廃棄物は、原発敷地内など放射線管理区域で排出され、そこに止まっている廃棄物のことだ。でも、除染等で排出された廃棄物は放射線管理区域外にあり、住民の生活環境にある。そのため、原子力法制の枠外で規制が必要になる。だから、ダブルスタンダードではない。
この論理は、すでに2011年の段階でガレキを他の都道府県の焼却場で焼却処分する時にガレキを放射性廃棄物としないとした時に使われました。それが、ここでも適用されるわけです。
ただここでは、基準値が80倍になったということだけで批判すべきではありません。それは、この8000ベクレル/kgという値が土壌の汚染濃度を示すだけで、それだけでは人体に対する影響について何もいっていないからです。
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環境省の「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」資料から抜粋 |
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