2018年5月08日更新 − HOME − 食品汚染 − 記事
福一原発事故から7年(3)
− 食品の放射能汚染 − 
食品の放射能汚染はどうなのか?

たとえば、南相馬市の市民測定センターの測定値を見てみましょう。南相馬市は福一原発北に位置し、同市南部の小高区は避難区域でした。同センターでは、地元産の農作物の放射能汚染を測定しています。


2016年のデータによると、キノコ類の平均汚染(セシウム134と137の合算値、以下同じ)は、まだ10,000Bq/kgを超えています。


それに対して、果実類の平均汚染は2012年に100Bq/kgを超えていましたが、2016年には17Bq/kgにまで下がっています。


野菜も、2016年の平均汚染は10Bq/kg以下になっています。これは、セシウムが時間の経過とともに土に吸着するほか、畑ではカリなどの肥料をまくので、野菜がカリのほうを吸収するからだと見られます。


ただ、長ネギや小松菜、里芋、キャベツなどの一部の野菜で、2014年くらいから汚染度が上昇する傾向が見られます。ただその原因は、わかっていません。


それに対し、キノコ類と同じように、まだ汚染度の高いのが山菜類です。2016年の平均汚染は、500Bq/kgを超えています。これは、山菜類がキノコ類と同じように野生のものが多いことと、山野の土はカリウム不足で、カリウムに代わって化学組成の似ているセシウムが吸収されるからだと見られます。


肉では、イノシシの肉の汚染度が高く、2016年の平均値でも7700Bq/kgを超えています。それに対し鶏肉では、2016年に汚染されていたものは検出されていません。


米では、玄米と白米においてともに汚染が2012年から2016年までに著しく減少しています。2016年の玄米の平均汚染は、3Bq/kg未満でした。米の汚染は、玄米から白米、さらにご飯となる毎に低くなる傾向があります。たとえ白米の汚染が16.70Bq/kgでも、ご飯の汚染は1.21Bq/kgに止まります。


米に関しては、福島市の市民測定所の測定結果においても、南相馬市の測定結果に似た結果がでています。ただ、検体によってはまだ高い汚染を示すものが出てくる可能性があるので、測定はまだまだ続けていく必要があります。


農作物の汚染が現在、キノコ類やイノシシの肉など一部を除いて低くなっている状況は、チェルノブイリ事故後のドイツ、特にドイツ南部バイエルン州の状況とよく似ていると思います。バイエルン州の食品汚染の状況については、拙書「ドイツ、低線量被曝から28年、チェルノブイリは終わっていない」(言叢社刊)を参照ください。


なお、一般食品の汚染基準値(上限、セシウム134と137の合算値)は日本で100Bq/kg、ドイツを含むヨーロッパで600Bq/kgと、ヨーロッパのほうが6倍も高いことに注意してください。


(2018年4月30日)


福一原発事故から7年
(1)避難指示区域 (2018年4月29日)
(2)避難指示解除 (2018年4月29日)
(4)汚染地域での農作業 (2018年5月03日)
(5)汚染土壌の処分 (2018年5月08日)

放射線テレックス(Strahlentelex)に投稿した関連記事(ドイツ語)
Zurückkehren oder nicht (November 2015)
Bürgermessstellen in Japan kämpfen um ihre Existenz (August 2017)
Das Viertel der Alten (September 2017)
Die menschenleere Stadt und die wilde Natur (November 2017)
Vom AKW-Arbeiter zum Atomgegner (Januar 2018)
Wie schwer ein Haus zu sanieren ist (Februar 2018)
Vorsicht mit der Heimat! (März 2018)
記事一覧へ
この記事をシェア、ブックマークする
このページのトップへ