2023年2月15日掲載 − HOME − 放射線防護 − 記事
ヨウ素剤を常備しておこうか

2007年夏だったかと思う。広島であった核兵器反対の国際会議に参加していた。その時、原発反対派の活動家たちに、日本では原発のある自治体にヨウ素剤が常備され、住民に配布されているかを聞いたことがある。その時の返事は、日本でも配布されているということだった。


これは、ヨーロッパにおいて原発を有する自治体では、入居して住民登録する時にヨウ素剤が配布されるところもあるから、日本ではどうなっているのかを確認したかったから聞いたのだった。


ぼくはその時、それで安心した。ところが2011年3月にフクシマ原発事故があった時、ヨウ素剤が原発周辺の住民に配布されていなことがわかり、びっくりした。


ただヨウ素剤が配布されていれば、安心というわけではない。


ぼくの昔の同僚のテレビカメラマンが、事故から25年以上経ってからチェルノブイリ原発に取材にいった時だった。取材にいく前にヨウ素剤を飲んでいったので、安心して取材できたと自慢そうにいうのだった。


あら、これは困ったなあと思った。なぜか。


1986年4月に原発事故のあったチェルノブイリでは、放射性ヨウ素(ヨウ素131)によって被ばくする心配はもうないからだ。ヨウ素剤は放射性ヨウ素によって、甲状腺が被ばくしないようにするために飲む。


しかし、ヨウ素131の半減期は8日と短い。そのため、事故から25年以上経ったチェルノブイリにおいて放射性ヨウ素で被ばくすることはまず考えられない。


被ばくするとすると、半減期の長いセシウム137などによってだ。しかしそのために、ヨウ素剤を飲んでいても効果はない。


ヨウ素剤が配布されるのは、原発事故直後は半減期の短いヨウ素131などが多量に飛散するので、それに対するものだ。その他の放射性物資には、効果がない。


その他の放射性物質に対しては、ペクチンの含まれているものを食べておくのがいい。ペクチンには、放射性物質を吸収してそれを体外に排出する効果がある。


ペクチンは、ジャムやゼリーなどにとろみをつける植物繊維。りんごやレンモンなどの柑橘類の皮に含まれている。そのため、ペクチンの含まれているものをよく食べておけば、被ばくに対して多少の効果はあると思う。


今ウクライナ戦争で、ウクライナにある原発が攻撃され、原発事故が起こる危険が増している。ウクライナで原子炉が爆破された場合、ぼくのいるベルリンは、放射能で汚染されるのだろうか。


それは、風向き次第だ。風が東から西に吹かない限り、ベルリンは被害を受けないと見られる。


もちろん、事故後に飛散した放射性物質がどのように飛び回るからは、その時その時の大気の風向き次第。風が東から西に吹かない限り、ベルリンが安全たという保証はどこにもない。


それなら、万一のために備えて、今ヨウ素剤を常備しておいたほうがいいのだろうか。


ヨウ素剤の効果については、すでに上述した通りだ。そこから、自分自身で判断してもらうのが一番いいかと思う。


さてぼくは、どうしようかな。


(2023年2月15日)
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関連サイト:
• 安定ヨウ素剤事前配布に係る情報ページ(新潟県)
• 安定ヨウ素剤事前配布について(福井県)
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