2024年9月08日掲載 − HOME − ぶらぼー! − オーケストラ
ベルリン音楽祭、マナコルダがマーラー室内管弦楽団に里帰り

室内管弦楽団ポツダム・カンマーアカデミーの首席指揮者・芸術監督アントネッロ・マナコルダは、指揮者クラウディオ・アバドとともにマーラー室内楽管弦楽団を共同で設立し、同楽団でコンサートマスターを務めていた。


そのマナコルダがベルリン音楽祭で、指揮者としてマーラー室内楽管弦楽団に里帰りした。演奏されたのは、アイヴズの7つの初期歌曲とマーラーの7つの初期歌曲(いずれもドイツ人現代作曲家クローケが編曲、歌:アンナ・プロハスカ)、ドヴォルザークの交響曲第9番⟪新世界より⟫。


演奏された作品だけを見ると、「何とまあ、バラバラな作品を選んだのか」と思うかもしれない。しかしその根底には、しっかりとしたつながりがある。


いずれも作曲家自身が生活で体験したことを作品で表現し、自分の感じたことを音楽の響きに反映させようとしてきた作曲家だからだ。まったく異国の地で作曲しても、祖国の民族音楽的な要素が作品に残っていたりする。


演奏されるのが『ドヴォルザークの新世界』と知った時、それなら中高生時代に、カラヤン指揮、ベルリンフィル演奏でもう、耳にタコができるくらい聞いているんだけどなあと思った。


でもマナコルダなら、これまで聞いたことがないかのように新鮮に聞かせてくるかなと期待して、チケットを買っておいた。


しかしその期待は的中するどころか、期待をはるかに上回った。


序奏は弦楽器だけではじまるが、その入り方がまったく自然できばりがない。いつの間にはじまったのかという感じ。それでもう、こんなのはじめて、これからどうなるのかと期待が膨らむ。


演奏が続くにつれ、オーケストラの音色の豊かさと抑揚の深さ、テンポの変化の豊かさにびっくりさせられる。これが『新世界』だったとは、こんなすごい音楽だったとははじめて感じさせられる。


とてもいいオーケストラだというのはわかるのだが、マナコルダがそれをこれでもかと最大限に、いやそれ以上に引き出している。


楽団員は真剣な眼差しで、わあたいへん、でもすごいと感じながらも、音楽を楽しんでいるのがよくわかる。


マナコルダの音楽ではいつも、音符の一つ一つに自分はこうしたいというのがしっかり感じられる。今回もそうだった。数回のリハーサルで自分の音楽をオーケストラに浸透させ、そこからさらにオーケストラの力を最大限に引き出すのだからすごい。


マーラーの歌曲でも、同じだった。


クローケによるオーケストレーションは、単なる伴奏ではない。マーラーの交響曲の主題をあちこちに散りばめて、オーケストラと歌が並行して音楽を奏でるように構成させている。音楽の音色と抑揚が豊かなこと。マナコルダがマーラーの音楽をよく理解しているのがわかる。


マナコルダ指揮で早く、マーラーの交響曲を聞いてみたいと思いながら聞いていた。


『新世界』が終わると、会場のフィルハーモニーホールは感動の渦に包まれる。ブラボーという声があちこちから飛び、スタンディングオベーションとなった。


マナコルダはまだ、知る人ぞ知るという指揮者。でもベルリンではベルリンのオーケストラやオペラハウスばかりでなく、マナコルダのようにいろいろな指揮者や楽団を聞いて発掘できるからありがたい。


(2024年9月08日、まさお)
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関連サイト:
ベルリン音楽祭公式サイト(ドイツ語)
マーラー室内管弦楽団公式サイト(英語)
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