二酸化炭素の排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルを実現するには、産業も二酸化炭素を排出しないように、グリーン化しなければなりません。その救世主とされるのが水素です。
水素は中学の理科の授業で習ったように、電気分解によって得ることができます。でもそのために、たくさんの電気を使います。
産業界が水素を必要とすると、水素の需要が莫大に増えます。同時に、たくさんの電気が必要になります。ドイツはそのための電気はすべて、再生可能エネルギーで発電された電気とすることを計画しています。
それも、できるだけ国内において再エネで発電された電気を使います。主に洋上風力発電がそのために利用されると見られます。ただ国内で発電するだけでは水素の需要を見たせいない場合も考えられます。
その場合に備え、北アフリカにおいて再エネで発電された電気を水素製造に使うことが計画されています。すでに、その事前契約も準備されています。
こうして再エネで製造される水素を「グリーン水素」といいます。
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写真真ん中の白い建物が、ドイツ北東部プレンツラウ郊外にある水素製造試験プラント。周辺の風力発電施設で発電された電気を使って、電気分解によって水素を製造する。設置された当時は多分、再エネと水素製造を組み合わせた世界初のパイロットプラントだったと見られる。水素は起爆性が強いので、プラント敷地内では携帯もカメラも使ってはならなかった |
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それに対して欧州連合(EU)においては、火力発電や原子力発電で発電された電気を水素の製造に使いたいとする加盟国もあります。火力発電の場合は、CCS技術と組み合わせて二酸化炭素を分離して地下などに貯留して、二酸化炭素を大気に排出しないようにします。
こうして製造される水素を「ブルー水素」といいます。
水素はグリーンであるべきか、ブルーも認めるべきか。それが問題です。
今のところ、EUにおいて各加盟国で事情が異なるので、ブルー水素も認める方向です。これは、気候変動対策において原子力発電を「持続可能だ」として、わざわざ『グリーンののし紙』をつけて「グリーン」だと強調するのとよく似ています。
ブルー水素では、「本当にグリーンか」という問題ばかりではありません。
大型の火力発電所や原子力発電所で発電された電気を使って水素を製造すると、日本の水素戦略のように、電気はいくらでもあるから、何でも水素を使って解決すればいいと安易に考えてしまう危険があります。
しかし電気を使って水素をあらん限り製造し、水素を産業ばかりでなく、発電や熱供給、車の燃料としてまで使っていては、水素はいくらあっても足りません。その上、エネルギー効率もよくありません。
これまでベルリン@対話工房のサイトのあちこちでいってきましたが、電気はできるだけ最終的に使うエネルギーとして使うほうが、エネルギーを効率よく使うことになります。
だから自動車は、電気自動車とします。産業界において水素を使うのは、どうしても水素でなければならない場合だけに限定します。そうして、必要となる再エネの発電電力量をできるだけ抑えます。
そうすれば、再エネだけで水素を製造できるようになります。
たとえばドイツの環境シンクタンク「アゴラ・エネルギー転換」は、ドイツにおいて電気の総需要は、最終的に今の1.6倍くらいになると推定しています。
(2021年12月15日)
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