この問題は、ここにきてはっきりしたと思います。電気自動車です。
なぜでしょうか。
それには、主に2つ理由があります。
一つは、これまでサイトで何回か指摘しました(「なぜ電気自動車なのか?」)。電気は、電気として最終目的に利用したほうが効率がいいからです。
電気自動車では、再生可能エネルギーで発電された電気をそのまま使います。しかし水素自動車では、再エネで発電された電気で一旦水素を製造してから、水素を燃料とします。
この時、水素を製造するのにたくさんの電気が必要です。さらに、電気エネルギーがすべて水素(化学エネルギー)に変換されるわけではありません。
再エネで電気を発電することを前提にすると、電気を電気として利用する電気自動車のほうが、電気をより効率的に利用することになります。
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サッカー場の前で充電中の電気自動車 |
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もう一つの理由は、製鉄をグリーン化するためなど(「重工業をグリーン化する」)、水素が産業界で必要とされることがはっきりしたからです。その水素もグリーン化するために、再エネで発電された電気で製造されなければなりません。
産業界での水素の需要が多いだけに、自動車と水素の取り合いにならないようにしなければなりません。そのためには、自動車が電気自動車であれば、水素と競合しません。
自動車は電気、産業界は水素という区分けは、コロナ禍の影響でより加速すると思います。
それは、コロナ禍で経済的な打撃を受けた産業界を支援する時に、化石燃料を基盤とする従来の技術に投資しても意味がないからです。今投資するなら、将来を考えて、環境政策を組み合わせて産業界を環境にやさしく、持続可能に構造改革する必要があります。
コロナ禍は、そのために産業を構造改革する絶好のチャンスだと見るべきです。コロナ禍でこれまでにない莫大な支援をするなら、過去にではなく、将来のために莫大なお金を使いたいものです。
ドイツをはじめ、EUではこれを「グリーンディール」政策として、コロナ支援策によって脱炭素社会を目指して、産業の構造改革を進めます。
日本では、これを「グリーンリカバリー」といっています。でもグリーンリカバリーでは、日本が世界の動きに乗り遅れ、後手に回ってしまったと思います。
グリーンリカバリーは、再エネを基盤にしなければなりません。
しかし日本は、発電をこれまで通り、火力発電と原子力発電に依存する政策に固執しています。それでは、グリーンリカバリーそのものが成り立ちません。
(2020年9月09日)
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