2023年3月15日掲載 − HOME − 再エネいろは一覧 − 記事
e-fuel(合成燃料)とバイオ燃料は違うのか?
再生可能エネルギーQ&A

e-fuel(イーフューエル)ということばを聞いたことがありますか。


日本ではトヨタなど大手自動車メーカが電気自動車に対抗し、e-fuelによってこれまで通り、内燃機関で車を走らせることができると注目しています。


ドイツでも、欧州連合(EU)が内燃機関を利用するガソリン車とディーゼル車を2035年から販売できなくすることを最終決定する直前になって、与党の自民党がそれに加えてe-fuelを認めるよう求め、ドイツ政府内ばかりでなく、EUにおいても大混乱させています。


e-fuelとは、何のことでしょうか?


簡単にいうと、水素と二酸化炭素を合成させた液体燃料です。e-fuelは、ガソリンや軽油の代替燃料になるものです。それによって、ガソリン車やディーゼル車を走らせることができるようになります。


ただしe-fuelを脱炭素化するには、水素を再生可能エネルギーで発電された電力を使って製造しなければなりません。二酸化炭素も、火力発電所などから化石燃料を燃焼させた後に排出される二酸化炭素ではなく、空気中の二酸化炭素を利用しないと、ガーボンニュートラルにはなりません。


ただ水素を製造するためにたくさんの電力を使う上、それを二酸化炭素と合成させるためにも電力を使います。その結果、再エネ電力の需要が大幅に増えます。それでは再エネ電力がいくらあっても、足りなくなる状況になりかねません。製造コストも、かなり割高になります。


e-fuelを自家用車の燃料として使って十分に採算性があるのかどうか、とても疑問です。


自動車という交通手段は、燃料スタンドが十分に整備されないと機能しません。電気自動車とe-fuelを併用するとなると、そのインフラの維持に二重のコストが発生します。


ドイツではポルシェが、e-fuelの導入に積極的です。それは、電気自動車ではスポーツカーとしての魅力が失われるからです。内燃機関車でないと、スポーツカーのような加速は期待できません。


それに対して長距離トラックや飛行機など、電動化では問題のあるところでe-fuelを使うほうが、より効率よく再エネ電力を利用することができます。


e-fuelをよく、バイオ燃料と混同している人がいます。


バイオ燃料は、生物原料を加工して車の燃料にするものです。エタノールは、さとうきびなどからつくるガソリンの代替燃料となるもの。バイオディーゼルは、菜種などから製造する軽油の代替燃料となるものです。


問題は、生物原料を使うので、食品と競合してしまうことです。食品と競合しないように生物原料の生産量を上げるには、たとえばブラジルなどで見られるように、森林を伐採して農地を拡大しなければなりません。その結果、二酸化炭素を吸収する木を失います。


バイオディーゼルは、使用済みの廃食用油からも製造できます。しかしその場合、生産量に限界があります。


e-fuelもバイオ燃料も将来、再エネ電力を使って製造します。その場合、再エネ電力のエネルギー量がそのまま、燃料に1対1で転換されるわけではありません。製造されたバイオ燃料もすべてのエネルギーが運動エネルギーに転換されて、車を動かすわけではありません。


それでは、エネルギーを効率よく使えません。再エネ電力を最終エネルギーとして使う電気自動車をできるだけ多く普及させる以外、エネルギーを効率よく使う方法はありません。


(2023年3月15日)

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関連サイト:
すれ違う日本と欧州のE-Fuel:日本のとるべき戦略(京都大学大学院経済学研究科再生可能エネルギー経済学講座)
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