2022年7月03日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
EU、ガソリン車とディーゼル車は2035年から販売できない

欧州議会は2022年6月はじめ、2035年から内燃機関をベースとする自動車の販売を認めない決議をした。


しかし、欧州議会の決議には法的な拘束力がない。EU加盟国がそれに同意しない限り、欧州議会の決議は有効とはならない。


EU加盟国の環境担当大臣会議はそれに対して、2022年6月29日、二酸化炭素を実質的に排出しないゼロエミッションの自動車しか2035年から販売を認めないことで妥協した。


内燃機関自動車を認めないのと、ゼロエミッション自動車しか認めないのでは、どこに差があるのだろうか。


内燃機関自動車とは、車のエンジンで燃料を燃やして走る車のこと。内燃機関自動車を認めない、自動車のエンジンが搭載されている車はすべて認めないことをいう。自動車は、電気自動車と水素を燃料とする燃料電池車しか認めないということだ。


それに対して、ゼロエミッション車を認めるとは、二酸化炭素排出が実質的にゼロ、つまりカーボンニュートラルであれば、車のエンジンを使って車を動かすことを認めるということだ。ここでは、電気自動車と燃料電池車以外に、さらにE-Fuelsといわれる生物資源燃料であるバイオ燃料をエンジンで燃やして走る車は、認められることになる。内燃機関であるエンジンは、バイオ燃料を燃料とするのであれば、認めるということでもある。


この問題は今後、欧州議会にもう一度持ち帰って、決議されなければ、環境担当大臣会議の妥協案は確定しない。


とはいえ、現段階ですでに、化石燃料の石油を原料とするガソリン車とディーゼル車は、EUでは2035年から販売できないのははっきりしている。


問題は、バイオ燃料車を認めて、将来性があるのかどうかだ。


サイトの記事「菜種は貴重な原材料」でも指摘したが、バイオ燃料は食料と競合することが問題となる。バイオ燃料の原材料となる生物資源の栽培で、食料の原材料となる植物の栽培が減ってはならない。


そのためには、バイオ燃料車を認めるとしても、その台数は制限されなければならない。


バイオ燃料車はごく少数に制限しなければならないと思うが、そのために燃料スタンドなどのインフラを経済的に、十分整備することができるのだろうか。


ぼくは、それは不可能だろうと思っている。でも十分なインフラがないと、車は機能しない。


バイオ燃料車に固執するのは、バイオ燃料車の場合、従来の方法で自動車を生産できるからだ。電気自動車では、車の部品数は半分以下に減る。その結果、自動車産業においてたくさんの部品メーカが不要になるのはあきらかだ。


既存の産業構造と雇用を維持するには、バイオ燃料車を維持したいところ。しかしそのためには、バイオ燃料車が自動車の主流にならなければならない。しかし食料と競合することを考えると、それはまず不可能だ。


さらに本サイトで何回も指摘してきたが、エネルギーを効率よく利用するには、自動車では電気自動車とするのが一番効率がいい。


これらの事情を考えると、何回もいっているが、バイオ燃料は飛行機や特別な大型車など、電気化の難しいものに制限するのが、最も賢い戦略だと思う。


(2022年7月03日)
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関連リンク:
ドイツのバイオ燃料工業会のサイト(ドイツ語)
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