1カ月ほど前の2020年6月半ばに、ドイツ政府が再生可能エネルギーで発電された電気で製造することを前提に、水素戦略を閣議決定したことを報告した。ドイツ政府は水素技術の開発と実用化に、全体で90億ユーロ(1兆円弱)を投入する。
これは、水素を交通部門や熱供給部門の燃料として使用するばかりではない。水素を産業部門、特に製鉄や化学部門に使うことを目指していると書いた。
この戦略は、再エネで発電された水素を産業部門に使用して、産業をグリーン化する第一歩だと見なければならない。
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写真のような化学工場プラントでも、低炭素化を図り、グリーン化をめざす |
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本サイトではすでに、ドイツの大手製鉄会社ティッセンクルップ社が製鉄プロセスで排出される排ガスから二酸化炭素を分離して、二酸化炭素をリサイクルする技術(Carbon2Chem)を開発していることを報告した(「二酸化炭素をリサイクルする」)。その場合も、水素が重要な役割を果たす。
製鉄においてはさらに、水素によって製鉄プロセスにおいて排出される二酸化炭素を大幅に減らすこともできる。
製鉄プロセスにおいて二酸化炭素が排出されるのは、酸化鉄を含む鉄鉱石から酸素を還元(除去)するのに、コークスを使ってその炭素と酸素を結合させるからだ。コークス(炭素)の代わりに、水素を酸素と結合させれば、二酸化炭素は発生しない。それを「水素活用還元プロセス技術(COURSE50)」という。
そうすれば、高炉の低炭素化、グリーン化を実現できる。ただドイツの製鉄業界は、その切り替えに300億ユーロ(約36兆円)の投資が必要だとしている。業界はまず、2020年末までに100億ユーロ(約12兆円)を投資する予定だ。
こうした中、ドイツ経済省も2020年7月半ば、製鉄のグリーン化に向けて2024年までに4億3000万ユーロ(約520億円)の予算を計上する予定だと発表した。
ドイツはこうした産業グリーン化の新しい技術によって、ものつくり国として生産拠点を国内で維持する計画だ。
(2020年7月18日)
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