前回、ドイツ政府が2038年までに脱石炭するため、石炭火力発電所を最終的に停止するための具体的なロードマップについて関連州と合意したことについて書いた。
ドイツ政府はそれまで、脱石炭について諮問委員会で得られた合意内容を一対一で立法化すると約束していた。諮問委員会は、社会の各層から構成され、合意は社会的コンセサスだった。
しかし今回決まったロードマップは、社会的コンセンサスを一対一で実現するというには程遠い感がある。
前回の最終停止予定を見れば、一目瞭然だ。
最終的に停止される石炭火力発電所が2030年直前と、2038年直前に集中している。諮問委員会では、2038年まで時間的に満遍なく分配して発電所を停止させることで合意されていた。
合意された最終停止予定は、2030年と2038年に辻褄を合わせているだけ。二酸化炭素はその分、諮問員会で合意されたものよりより多く排出される。
さらに諮問員会は、石炭火力発電所を新たに稼働させないとしていた。しかし政府の合意は、最終停止に伴う損害賠償をできるだけ少なくするため、できたばかりの石炭火力発電所の稼働を認めている。
これも、約束破りだ。
発電所停止に伴う損害賠償についても、諮問委員会は老朽化した発電所が多いことから、最終停止時期を確定せずに、EUでの(二酸化炭素)排出権取引によるコスト負担と、市場での競争力低下に伴って経済的に発電所を停止せざるを得なくなるのを待つほうがいいともしていた。
しかし政府の合意では、老朽化した発電所にも手厚い損害賠償がされる予定だ。電力業界のくすくす笑っている声が聞こえるくらいだ。
諮問委員会の元委員8人が、政府の合意内容を約束違反だとして批判する声明をだしている。
環境団体の代表として諮問委員会に参加していたドイツ自然保護リングのニーベルト代表は2020年1月21日の会見で、「(政府の合意は、)社会的コンセンサス破りだ。社会を混乱させるだけ」と批判した。
(2020年1月25日)
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