ドイツ政府は6月はじめ、総額1300億ユーロ(約16兆円)に上る景気刺激対策を発表した。それによって、新型コロナの影響をもろに受けた消費と経済を活性化させる。3月の1560億ユーロ(約18兆円)規模の緊急経済対策に続くものだ。
それに伴い、ドイツは今年だけで総額2185億ユーロ(約27兆円)と、過去最大の新規借り入れをしなければならない。
これだけ莫大な借金をしてまで立て直す経済。そのお金がどこにいくのかが気になる。
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ベルリン郊外フェルトハイムにある風車 |
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3月の対策は、新型コロナの影響で仕事がなくなって緊急に流動性(お金)を必要とする企業やフリーランサーなどを救済するものだった。だからそれだけ、今回6月の景気対策でお金がどこに流れるのかが注目される。
それによって、従来産業を立て直すのか、それとも将来を見据え、構造改革も考えて景気対策を行うのか。
残念ながら、前者に比重を置いた景気対策だといわなければならない。
ドイツの主要産業の自動車業界からは、自動車販売を促進させるため、ガソリン車やディーゼル車の購入時に補助金を給付してほしいとの強い要望があった。しかし、ドイツ政府はそれを拒否。補助金の給付は、電気自動車とハイブリッド車の購入時に限定される。
しかしそれ以外は、これといった構造改革を目的とした対策は見られない。特に、気候変動対策や再エネの促進という面では、ほとんどこれといった対策は講じられない。
緊急性から、まずは既存産業を立て直し、それから構造改革へという感じだ。だが今将来性のない一部既存産業を立て直しても、それは捨金になる可能性が大きい。それならしっかりと将来性のない産業構造にメスを入れて、構造改革を目指した景気対策をしたほうが、同じお金を使うにしても有効なはずだ。
構造改革に向けた大きなチャンスを逃してしまったか。
(2020年6月21日)
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