気候危機が深刻になっている。その認識に異論はないと思う。そのため、二酸化炭素の排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルを実現することが計画されている。
カーボンニュートラルの必要性ととともに、再び主張されるようになっているのは原発の必要性だ。発電で二酸化炭素を排出しない原発が脱炭素化の救世主のようにいわれる。その中でも、モジュール型小型原子炉が注目されている。小型炉については、何回にも渡って問題点を指摘したのでここでは繰り返さない。だがこれから本当に、原発ルネッサンス時代に入るのだろうか。
ここでは、ちょっと奇妙な現象が起こっている。気候変動を理由に原発の必要性は主張されるが、原発が気候変動状態で問題なく運転できるかどうかは、ほとんど語られない。
気候変動が起こらないようにするために原発を使うのだから、そんなことは考えなくてもいいといわんばかりのような気がする。
でも現実には、すでに異常気象が起こっている。夏はすごく暑い。冬はすごく寒い時もある。台風や竜巻、ゲリラ豪雨などが頻繁に起こるようになった。山火事も続いている。温暖化とともに、海面の水位が上昇するのは明らかだ。
原発推進派はカーボンニュートラルに向け、電力を安定供給するためには、原発が必要になると主張する。でも気候変動による異常気象状態で、原発は安全に運転され、安定供給が可能になるのだろうか。
ぼくには、とても疑問だ。
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日本では原発どころか、火力発電所もこうして沿岸沿いに設置されている。これも問題だ。写真は、福島県の広野火力発電所 |
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ヨーロッパの原発は日本の原発と違い、海よりも水量の少ない河川から冷却水を取水している。その分、熱波の影響を受けやすい。すでにドイツの原発も夏の暑い時に、河川の水量が減る。水温も高くなりすぎて、冷却水を取水できなかった。その結果、運転を長期に停止しなければならないことが何回もあった。
日本の原発は海水を冷却水にしているから、こうした問題はないのだろうか。そうではない。海水の温度が上昇すれば、発電出力を下げるどころか、運転を停止しなければならない事態となる可能性もある。
水温が高いと、事故時に冷却水が十分な冷却効果をもたらさない。その点でも、原発を運転するリスクは大きい。
寒波で寒くなると、今度は原発プラントのどこかで、配管が割れたり、バルブが凍ってく動かなくなる心配がある。その場合、運転を停止しなければならなくなる可能性もある。
台風や竜巻、ゲリラ豪雨では、河川や海から原発プラントに水が侵入してくる危険がある。さらに原発プラント設備や送電網が破壊される心配もある。それでは、電力を安定供給できないどころか、原発事故の起こる危険もある。
現在、世界各地で山火事が頻繁に起こっている。幸いなことに、これまで原発近くで山火事は起こっていない。しかしそれも、時間の問題だ。いつ原発近くで山火事が起こるかわからない。この時、職員が原発を捨ててすべて避難しなければならなく事態も考えられる。その時、原発は緊急停止されるが、原発に飛び火する危険は避けられない。
温暖化では、太平洋の小島国が存続できない危険に晒されている。それは、海面の水位が上昇するからだ。日本の原発は沿岸沿いに設置されている。その分、温暖化による海面水位の上昇の影響を受けやすい。そのため今後、防潮堤対策に莫大なコストが必要になるのは間違いない。津波対策もこれまで異常に、厳しくしなければならなくなる。原発の運転を緊急停止するどころか、原発事故の危険も否定できない。
原発の問題は、リスク管理が難しいことだ。気候変動とともに、リスクがより多く、大きくなるのは明らか。その状況下で原発を拡大するのは、原発をよりリスクに晒すことになる。リスク管理がそれだけ、より難しくなる。
それは、原発が気候変動とは両立しないということでもある。
それでいて、発電において二酸化炭素を排出しないからという理由だけで原発の拡大を主張するのは、無責任としかいいようがない。
(2021年11月30日) |