日本のエネルギー基本計画は、自殺行為だ

 日本政府は、「第5次エネルギー基本計画」 を閣議決定しました。

 そこで、再生可能エネルギーの「主力電源化に取り組む」としています。まず、再生可能エネルギーの電源構成に占める割合を、2030年度までに22%から24%にするとしています。

 でも第1章でも書いていますが、日本の場合、約9%は水力発電です。水力発電は確かに自然エネルギーですが、日本のような大型ダムを使った水力発電は再生可能エネルギーではありません。それで、再生可能エネルギーを主力電源にするというのは、矛盾した話です。キャップをかけて、再生可能エネルギーがやたら増えないようにしているとしか思えません。

 もう一つの問題は、2020年から導入される容量市場です。これについては、サイトの「容量市場は必要か?」で書きました。

 ここで見えてくるのは、「主力電源化に取り組む」といっても再生可能エネルギーを主力電源にする気はない、してしまうと逆に困るということです。

 ぼくには、容量市場の導入は、これまでの総括原価方式に代わる新しいメカニズムだとしか思えません。それによって、大手電力会社を存続させ、原子力発電に莫大なお金を無駄に投資してきたこと、さらに原子力発電がやたら高いことを消費者にかわらないようにカモフラージュしているのだと思います。

 その詳細は、サイトを見ていただくことにします。

 ただ、再生可能エネルギーを主力電源にできない日本の事情もわかります。

 再生可能エネルギーが拡大すると、卸電力市場での取引価格が下がります。それは、太陽や風など再生可能エネルギーに限界費用(燃料費など)がないからです。この問題も、第1章で取り上げました。

 ドイツは現在、大手電力会社は再編し、発電事業から撤退する方向にあります。発電では、もう利益を上げることができないからです。ぼくは、再生可能エネルギーについても、将来固定価格買い取り制度がなくなると、そうなると思います。

 でもそうなると、日本では既存の電力市場が存続できません。大手電力会社を存続させるためには、総括原価方式に代わる新しい制度的なサポートが必要になっています。それが、容量市場の導入です。

 日本の地方では、原発に依存する大手電力会社が最大の雇用主です。それが倒れてしまうと、日本の経済、日本社会が成り立ちません。だから、大手電力会社と原発を新しい制度によって人工的に存続させる。それが、今の日本のエネルギー政策なのだと思います。

 でも、世界は再生可能エネルギーへ転換しようとしています。再生可能エネルギーが拡大するとともに、発電コストは限りなく安くなります。そうなると、既存の電力市場構造に依存した日本では、発電コストがやたら高くなってしまいます。

 日本は、伝統的にものつくり大国です。それで、ものつくりが維持できますか。もちろん、できません。再生可能エネルギーへの転換が遅れれば遅れるほど、日本は世界から取り残され、経済競争に負けていきます。

 日本のこの経済構造を換えるためには、長い時間がかかります。国際競争に負けないようにするには、構造改革をできるだけ早く実行して、地方が電力会社に依存しなくていい経済構造に再編しなければなりません。そうしない限り、日本はもう世界の競争に勝てなくなります。

 でも、新しい「第5次エネルギー基本計画」は、電力大手に依存した構想を維持しながら、再生可能エネルギーを徐々に増やすことしか考えていません。日本の将来のことを考えると、それは自殺行為としかいいようがありません。

 それで、いいのでしょうか?

2018年7月29日、まさお

参考記事:「容量市場は必要か?

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