原発に依存するベースロード電源と再エネは両立しない
前回、原発ゼロ政権ができて、原発ゼロ法ができても、民主主義においては、政権交代によってその政策が覆される可能性があることについて書きました。
そうならないようにするには、再エネを促進して電力システムの構造改革が必要であるとも書きました。そこでポイントになるのは、再エネがどの程度まで増えると、原発依存に逆戻りできなくなるのかです。
日本政府は現在、2030年度の電源構成を天然ガス火力発電が27%程度、石炭火力発電26%程度、再生可能エネルギー22-24%、原子力発電20-22%、石油火力発電が3%程度になるように目指すとしています。
このエネルギーミックス政策は、うまく機能しないと思います。再エネの割合が20%を超えると、この構造は経済効率が悪く、発電コストが上がります。
日本政府は基本的に、昼夜を問わず常に一定の発電電力量を安定して供給するベースロード電源を基盤にするほうが、安定供給と経済効率がいいと考えています。本当にそうでしょうか。
ここでベースロード電源になる発電方法は、石炭火力と原子力、水力などです。地熱も入れることができます。
石炭は燃えていると、すぐに消すことができません。原子力は緊急停止できますが、そこから再稼働するまでに時間がかかり、点検などかなりのコストがかかります。だから、石炭火力と原子力にはいつも一定の電力量を発電させます。
ところがここに、天候によって発電電力量が早いテンポで変動する再エネが加わります。この状態で、発電に変動の大きい再エネと、いつも一定量を発電するベースロード電源はうまくやっていけるでしょうか。
やっていけないと思います。再エネとベースロード電源は、再エネが増えれば増えるほど両立しなくなります。
日本政府の基本方針のように、再エネの割合を20%以上に引き上げると、電力需要の少ない夜間や祭日の昼間には、再エネだけで電力需要をすべて満たすことができる時間帯が増えます。
なお今、日本のエネルギー構造では風力発電の割合が低いので、夜間に再エネによる発電電力量が増えることは考えられません。でも日本政府は、再エネにおいて風力発電が少ないのは問題として(当然です)、これを大幅に増やす方針です。
ドイツの場合、再エネで発電された電気を優先的に使います。そのため、再エネが増えれば増えるほど、石炭火力と原子力で発電されたベースロード電力が余る時間帯が増え、ゼロ価格やマイナス価格で無理やり電気の引き取り手を探してきました。それでは、経済効率が悪いのは明らかです。
日本のエネルギー政策において、再エネとベースロード電源を両立させようとするのは、原子力を維持するための詭弁にすぎません。再エネが増えれば増えるほど必要になるのは、その変動に応じて発電電力量を柔軟に調整できる天然ガス発電です。それを調整力といいます。
再エネと調整力をミックスさせて安定供給を維持する。それが、再エネ中心の将来の電力システムの構造です。ベールロード電源に固執する日本の政策には、無理があります。この問題を見て見ないふりをしているとしか思えません。
2021年5月09日、まさお
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