2021年11月06日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
風力発電から見たカーボンニュートラルへの課題

2年前、ドイツで陸上風力発電が伸び悩み、低迷していると書いた(「風力発電産業が危ない」)。2019年1月から3月までの第1四半期に設置された風力発電施設は、前年同期に比べると、82%も減少した。


その背景の一つに、野鳥保護や景観保護、騒音問題で周辺住民の反対が強いことを挙げることができる。その結果、陸上風力発電に関連する訴訟が増大している。


許認可を出す機関も慎重になっており、申請から許可が降りるまで、6年もかかっているといわれる。


さらに、再生可能エネルギーで発電された電気を固定価格で買い取る制度(FIT制度)において、入札で固定価格を決める制度が導入された。それに伴い、固定価格が俄然下がった。そのため、風力発電に投資する魅力がなくなっている。


ドイツは現在、2045年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを実現することを目標とする。そのためには、国土の最低2%に風車を設置する必要があるという。風力発電をこれまで以上に、早いスピードで拡大しなければならない。


まず最初のハードルは、2030年までに発電における再エネの割合を65%とすることだ。そのため再生可能エネルギー法は、陸上風力発電の総発電出力を2030年までに75GWにするとする。


ドイツ環境省の下級官庁である環境庁はそれに対し、それでは不十分、105GWは必要だとする。


陸上風力発電の総発電出力は現在、55GW。そのうち2030年までに、20GWが老朽化などで取り壊されるという。この状況下において、2030年までに105GWを達成するには、最低70GW分の風車を新設しなければならない。これから毎年、8GW分の風車を設置する勘定となる。


現在、陸上で設置される風車の最大出力は、6MW。それでさえ、まだそれほど普及していない。現在は3MWが主流だ。たとえすべてこの大型機を設置するとしても、2030年までに1万機以上設置する必要がある。そのためには、毎年、1000機以上設置する勘定となる。


2021年に入り、陸上風力発電が再び盛り返しているといわれる。9月までの9カ月間に設置された風車は350機。ただ総発電出力は、1400MW弱にすぎない。1.4GWということだ。


それを来年2022年から、毎年8GWに引き上げなければならない。今の約6倍ということだ。


カーボンニュートラルといえば、簡単に聞こえる。でも陸上風力発電についてだけ単純計算しても、これから課せられる課題がいかに大きいかがわかると思う。


(2021年11月06日)
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