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ドイツ経済気候省が再生可能エネルギーの利用を大々的に拡大するための法改正案を提示したのはすでに、本サイトでも報告した(「ウクライナ戦争で再エネ拡大を加速」)。ここでは一般的には、太陽光発電や風力発電を意欲的に拡大することしか注目されないと思う。
それに対し、天然ガス発電に代わるものとして、バイオガス発電が重要視され、拡大されることはあまり注目されない。しかしぼくは、これがとても大切だと考えている。
それはなぜか。
再エネ発電の割合が増えるにつれ、発電においてバイオガス発電がたいへん重要になるからだ。そればかりではなく、特に地方においてバイオガス発電が地元において熱供給を自給自足するチャンスをもたらすからだ。
再エネによる発電では、発電電力量の変動が大きい。その変動と需要の変動に柔軟に対応できるのは、ガス発電しかない。ガス発電でも、バイオガス発電では天然ガスと異なり、必要な燃料は国内で調達でき、コストがかからない。
それは、バイオガス発電の燃料は一種の『ゴミ』だからだ。農業で排出される家畜の糞や生物資源。さらに、われわれの食生活から排出される調理のくずや残飯なども、その燃料となる。
その『ゴミ』をいかに効率よく回収し、コストを削減するかが重要となる。その点で、農業に依存する村などでは、バイオガス発電を行いやすい。
さらに、バイオガス発電で排出される排熱を地域熱源として利用できるので、熱電併給(コジェネレーション)が実現できる。
ドイツではすでに、地方の村ではバイオガス発電が進んでいる。バイオガス発電の行われている地域では、ウクライナ戦争に伴うガスの供給問題、ガス価格の高騰の影響は受けていない。
さらに、バイオガス発電の後に残る残さは、農業において肥料としても利用できる。
バイオガス発電ではこうして、農業において資源(燃料)を効率よく循環利用できる上、農業に副収入をもらしてくれる。一石二鳥といってもいい。
以下では、バイオガス発電の仕組みを写真を使って、簡単に説明しておくことにする。
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| このバイオガス発電施設では、豚の糞を発酵用に使っていた |
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| バイオガス発電には、農業から排出されたワラやとうもろこしの茎や葉(生物資源)を破砕して発酵槽に入れ、家畜の糞と混合して発酵させる |
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| 家畜の糞と生物資源をドームのような発酵槽に入れる。発酵槽の上部にメタンガスが貯まる。現在発酵槽のドーム型部分を大きくして、ガスの貯蔵量を増やすプラントが増えている |
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| 発酵槽の内部では、メタンガスが排出される |
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| 発電機。バイオガス発電では、天然ガス自動車や船のエンジンを使っても発電できる |
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| バイオガス発電で排出される排熱は地域熱源として利用され、発酵槽に残った残さは肥料として利用される |
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(2022年9月17日)
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