2022年7月24日掲載 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
ウクライナ戦争で再エネ拡大を加速

ドイツのハーベック経済気候大臣は就任後の2022年1月、気候変動対策を大幅に加速させるため、気候編変動に関連する法規を大々的に改正する意向を示していた(「ドイツ経済相、気候保護政策はこれまでの3倍の速度で」)。


しかしロシアがその1カ月後に、ウクライナに侵攻。ロシアの資源に依存するドイツのエネルギー供給が不安定になり、エネルギーも高騰。ドイツは、戦後稀に見るインフレ状態に陥っている。


エネルギーのロシア依存を軽減して、エネルギーのロシア依存から脱皮するには、国内で当初計画していた以上に再エネを拡大させ、エネルギー供給を早急に、国内自給に切り替えなければならない。


そのための法規の改正案が、今年2022年の夏休み前に国会を通過、成立した。その主な点をまとめると、以下の通りとなる。


その中心になるのが、再生可能エネルギーだ。まず、電力消費における再エネの割合が、2030年までに最低80%に引き上げられる。2035年までに電力においてカーボンニュートラルを目指すという。


そのため陸上風力発電では今後、発電容量を年間最高10GWまで増築し、2030年における陸上風力発電容量を約115GWとする。そのために、ドイツ全土の面積の2%を陸上風力発電に利用することを目的とする。それに応じて各州に対して、陸上風力発電の拡大を義務つける。


陸上風力発電に対して、地元住民の反対が拡大している。それに対処するため、地元自治体が風力発電プロジェクトに資本参加できる道を開き、発電の利益が地元に還元できるようにする。さらに、市民発電所を積極的に促進する。


洋上風力発電の発電容量を2030年までに最低30GWとし、2035年まで最低40GW、2045年までに最低70GWとする。


太陽光発電では、発電容量を年間最高22GWまで増築し、2030年における太陽光発電容量を約215GWとする。


天然ガスのロシア依存を減らすため、2024年3月末までの過渡的な措置として、発電における天然ガス発電を縮小する。ドイツは2030年までに脱石炭を実現する目的で、安定供給の担保として、石炭火力発電所がリザーブとしてキープされている。そのため天然ガスに代わるものとして、国内で産出される褐炭などによる火力発電所をリザーブとしてキープできる期間を延長し、必要に応じて石炭火力発電を行う。


天然ガスに代わる調整力として、バイオガス発電の発電容量を2023年から年間600MWのペースで拡大する。


ドイツでは風力発電施設を建設するまで、6年かかるともいわれる。許認可手続きが複雑で、時間がかかるからだ。しかし再エネの拡大を加速させるためには、発電施設の許認可手続きを簡素化しなければならない。


今回の法改正では、建設法典による手続きの簡素化など手続き簡素化の施策も盛り込まれている。しかし現実にそれが機能するのかどうは、実際にはじめてみないとわからないと思う。


ドイツ政府は、ウクライナ戦争でロシア依存度の高いエネルギー供給を早いテンポで切り替えなければならくなっている。そのハードルはかなり高い。


そのためには、政府ばかりでなく、経済界も含めた社会全体の意識改革が必要だ。果たして、それが実現できるのか。第三者として、お手並を拝見するしかない。


(2022年7月24日)
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