ウクライナのザポリージャ原発がロシア軍の管理下に置かれ、1年以上が過ぎた。
ロシア軍がヨーロッパ大陸最大の原発であるザポリージャ原発を掌握したのは、なぜか。これまでいろいろ憶測されてきた。しかしまだ、ロシア側の真意はわからない。
原発はロシア軍管轄下にあり、弾薬などがたくさん持ち込まれているのは間違いない。
現在の戦況では、ウクライナ東部ドネツィク州のバフムートが激戦区となっている。ロシア側の優勢が伝えられる。しかしロシア軍は攻めあぐね、支配地域がすぐに広がる情勢ではないといわれる。
これは、ウクライナ軍がロシア軍を東部戦線で消耗させるため、バフムートを放棄せずに意図的に長期戦に持ち込んでいるのではないかと、ぼくは思っている。
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チェコのテメリン原発。同原発では、旧ソ連で開発されたロシア型加圧水型炉(VVER-1000/320)が稼働している。ロシア軍に掌握されているウクライナのザポリージャ原発と同型だ。 |
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ウクライナ軍の今後の戦略の中心は、ウクライナ東部と南部を分断して、南部で攻勢をかけることではないか。ウクライナ軍の最終的な目標は、ウクライナのゼレンスキー大統領が何回も主張しているように、2014年にロシア軍によって武力併合されたウクライナ南部のクリミア半島を奪還することだと思う。
ウクライナ軍はじっくりと、その時期がくるのを待っている。ドイツなどからまもなく。レオパルト戦車が供与される。戦闘機の供与を求めたのも、クリミア半島奪還が目的だと思う。
なぜ、クリミア半島なのか。
クリミア半島が、ロシア・プーチン大統領の『アキレス腱』だからだ。クリミア半島への補給が不可能になると、クリミア半島のロシア軍はもう動きが取れない。さらにクリミア半島が包囲されると、ロシア軍はウクライナ南部への補給もできなくなる。
クリミア半島が危ないとなると、プーチン大統領が政治的に、生き残れるかどうかも危うくなる。
その点でクリミア半島は、プーチン大統領にとり軍事的にも、政治的にもとても重要な『要塞』だ。
そこで気になるのは、ロシア軍に掌握されているザポリージャ原発だ。
というのは、ウクライナ軍が南部で攻勢に出て、万一クリミア半島が取り戻される可能性が生まれる場合に備え、ザポリージャ原発がプーチン大統領の『安全牌』のようになっているのではないかと思うからだ。
どういうことかというと、クリミア半島が危なくなった時、ザポリージャ原発を爆破すると脅しをかけることができる。もうクリミア半島の奪還が避けられない時には、やけくそになってザポリージャ原発を爆破してしまう覚悟もあるのではないかとさえ、ぼくは思っている。
もしザポリージャ原発が爆破されると、プーチン大統領には自殺行為にも等しいものとなる。ウクライナどころか、ロシアも含め、ユーラシア大陸の広大な地域が放射能で汚染されてしまう。たいへんなことだ。
原発の爆破は、遠隔操作で簡単にできるはずだ。その準備もすでに終わっているのではないか。ウクライナ軍と西側の情報機関は、その辺の情報も把握しているとは思う。しかし情報が把握されていても、それを実際に阻止できるかどうかは別問題だ。
こう心配するのは、軍事戦略には素人のぼくでも、これくらいのことは考えられるからだ。
ぼくの取り越し苦労であることを願いたい。
(2023年3月21日) |