2023年2月28日掲載 − HOME − 脱原発一覧 − 記事
原発で水を汚染させたくない

日本政府は今日2023年2月28日、原発の運転期間延長と原発利用の促進に関する法律などを含む束ね法案(GX脱炭素電源法案)を閣議決定した。日本も、原発へまっしぐらという感じだ。


欧州連合でも、原発で発電された電力で製造された水素を、よりにもよって「グリーン水素」とする方向で調整している。これは、原発を推進したいフランスの意向を反映させるものだと見られる。


フランスは、スペインにおいて再生可能エネルギー電力で製造された水素をドイツなどヨーロッパ大陸に輸送するためのパイプラインの建設もブロックしている。


ウクライナ戦争によるエネルギー危機問題を利用して、世界ではこの機会をとばかりに、原発推進のために合理的ではない論理を使ってグリーンウォッシングを進めている。


現在、温暖化による気候危機が問題になっている。その時に原発を推進するのは、目先のことしか見ていない典型的な事例だといわなければならない。そのツケは、そう遅くない時期に現れてくるはずだ。


いやそれはすでに、昨年からフランスでも大きな問題となって現れている。


ブロックドルフ原発
スロベニアにあるクルシュコ原発の取水口。この原発は、ユーゴスラビア時代に設置されたものだが、米国ウェスティングハウス製だ

それは、水不足の問題だ。フランスでは昨年夏から、旱魃で原発を十分に稼働できない状態が続いている。冬季になっても旱魃が続き、地域によっては水道水さえも十分に供給できないところもある。


この状況では、冷却に水を必要とする原発を十分に動かせない。ヨーロッパでは、冷却水として川の水を取水しているからだ。旱魃で川の水が不足すると、冷却水が十分にないので原発は稼働できない。


水不足とともに、飲料水も不足してくるのは間違いない。でも誰が一体、原発の冷却に使われ、放射能に汚染されている可能性のある水を飲料水として利用したいと思うだろうか。誰もいないと思う。


気候変動とともに、水不足が深刻になればなるほど、安全な水の供給と原発の稼働は両立しない。


日本では原発の冷却水を海から取水するから、問題ないと思うかもしれない。しかし水不足が深刻になると、海の水を脱塩して飲料水に使わなければならなく時がくる。そのためには、海の水も放射能に汚染されないようにすべきだ。


その点で、フクシマ原発事故によって発生した汚染水を海に放出するのも邪道だといわなければならない。将来の水不足の問題が頭に入っていない。


今の世代のミスジャッジは、後の世代がその負担をおわなければならなくなる。それでいいのかどうか、しっかり考える必要がある。


(2023年2月28日)
記事一覧へ
関連記事:
ポピュリズムと原発推進
ガスのグリーン化、脱炭素化
原発推進に走る日本につける薬はないのか
欧州委、原子力と天然ガスでグリーンウォッシングを確定
関連サイト:
水資源問題の原因(国土交通省)
この記事をシェア、ブックマークする
このページのトップへ